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- Re: 魔断聖鎧ヴェルゼファー ( No.5 )
- 日時: 2014/12/12 06:43
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: u0Qz.mqu)
唐突に現れたのか、もともとそこに居たのか。
まるで亡霊のように。
気配すら感じさせず、白簿の人影が佇んでいた。
ジッとこちらの様子を窺うように。
ロベルトの祖父は一瞬ギョッとし身構えた。
魔物かと思ったがどうやらこの影のようなものに敵意は皆無らしく危害を加えるつもりが無いと解り安堵した。
ならば遺跡に出没する道半ばで命落とした探索者の幽霊か、それとも未来を憂う古代人の妄執の残滓、あるいは自分を迎えにきた冥府の使いかもしれない。
死神ならばさっさとこの死にぞこないの己を連れていけばいい。
自嘲気味に嗤い白影を見ると、その影が何処かを指差している。
怪訝に思い影が指し示す方角をマジマジと眼を凝らす。
そこには極まれに一部の遺跡に存在するポーター(転移装置)が設置されていたのだ。
血の気を失って青褪めていた顔に希望と共に血色が戻り、彼を装置の下に走らせた。
ポーターはまだ機能しているらしく彼が装置の起動する光柱に包まれるのを人影は遠くから見ていたという。
光陣に覆われ、転移装置から遺跡の外へと脱出するとそこは祭壇のような造りの場所で、見上げれば白いアーチ状のゲートが存在していた。
後日彼はその場所を何度も訪れたのだが、遺跡内部に繋がる道は発見出来なかった。
自分が迷いこんだ遺跡にも再び訪れたが、あの時のように白い影は現れず、またポーターの所在も見つける事は出来なかった。
あの影はなんだったのか。
何故自分を助けたのか。
だが確かなのはその日以来何か言葉では言い表せない不思議な力に見守られている、そんな感じがあった。
ロベルトの祖父は懐かしそうに言い、皺の多い眼を細めて遠き時代に想いを馳せていたのをハンスたちは憶えていた。
「白い影の導き手・・・。発掘屋に昔から言い伝えられているお伽噺の類とばかり思っていたが今思えば祖父さんのあの話は本当だったのかもしれない・・・」
ロベルトは今は亡き祖父の若かりし姿を思い浮かべる。
「・・・白の伝承者か。だとしたらここには何かしらの古代技術にまつわる物があるかもしれないな」
ハンスもまた未踏の地に眠る未知の何かに期待を募らせる。
自分たちが目指す先に一体何が潜み、待ち受けているのだろうか。
それは今から確かめに往くのだ。
自分たちの行く末を暗示するかのように遺跡奥に続く無人の廃廊。
延々と続くかと思わせるそれは自分たちを誘うように誘う。
そして二人の若者は意を決し、突き進んでいった。