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- Re: 魔断聖鎧ヴェルゼファー ( No.6 )
- 日時: 2014/12/12 21:06
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: 3JMHQnkb)
奥へ進めば進むほどに遺跡の内部構造が真新しいものに変化していくのが手に取る様に分かった。
風化を免れたのかもしれないし、何らかの対応策が施されているのかもしれないが、建築技術に知識が乏しい二人にも気にはなるとこだが今は進むしかない。
ハンスの乗るガルデン弐型甲式が道を作る後ろからロベルトが安全を確保し追従する。
そうして迷路のごとく入り組んだ回廊を廻り続けること数時間、途中何度か休憩を取りつつ帰路のルートを確認しているが本当に此処から帰れるのかどうか不安が募るがもう後には引けない状況になっていた。
外は恐らく夜になっている可能性があるが遺跡の内部はどうしてかかなり明るく、さほど見通しには困らなかった。
しかし、のんびりもしていられない。鎧機の魔導燃料にも限りがあり、携帯する食糧の備蓄も万全とは言い難い。
万一尽きた場合を考えると最悪の事態もありえる。
未知の遺跡とはいえ何処からかの魔物の襲来も考えられる。
燃料が底を尽き動く事が出来ない鎧機では殆ど抵抗らしい抵抗はできない。ましてや生身の人間が相手に出来る訳がない。
それを思うと多少は無理をしてでも強行軍で遺跡深部を目指すしかない。
これ程広く、また建材物が新しければ魔導燃料の一つや二つ見つかるかもしれない。
もしかしたら今乗っているガルデンより高性能の鎧機の類、あるいはそれに代わる何かしらの古代技術の恩恵が得られると考え、二人の進行速度を早める。
次第に口数は減り、無言となり、それでも前へ前へと歩むハンスとロベルト。
二人の想いは同じなのだ。
確かめたい。
この先にあるものが何なのか。
既に目的はお宝では無く、発掘屋としての意地や根っからの性分、純粋な好奇心が疲労した肉体を支配し求めさせるのだ。
その答えを。
二人が行き着いたそこは広大な部屋だった。
ドーム状に広がる天井は見上げても何も窺えない。
いや、部屋というよりも空間、あるいは空洞と呼んだほうがしっくりくるだろう。
その中央にそそり立つ巨大なオベリスク。
石碑のようだが、見様によってはまるで墓標だ。
「・・・なんだこれは? 何か描かれているぞ。これは・・・鎧機か?」
ハンスがガルデンから降り、モニュメントに描かれた抽象絵を見上げる。
「確かに鎧機のようだが・・・今のものとは大分異なるな、それにこっちに描かれているのは魔物なのか? ・・・それにしてもデカいな、描かれている鎧機より何倍も巨大だぞ」
色鮮やかに装飾された壁画。
白い鎧機と対峙する巨大な黒い魔物。
戦っているらしい姿を捉えているようだ。
「どうやら戦争についてのようだが・・・過去に起こった歴史なんだろうか?」
ハンスが首を傾げる。
二人がそびえ鎮座する謎のオブジェに描かれた絵を見ていると、中心部分に古代文字らしきものが刻まれているのを発見した。
古代文字に詳しいロベルトが眉を顰め唸る。
今まで見たどの古代文字とも当てはまらない独特の形体だった。
「これは・・・。既存の文字に置き換えれば、一部分だけでも何とか読めると思うが・・・」
「読めるのか? ロベルト」
ハンスが問いかけると難しい顔をするロベルト。
「『・・・神・・・恵み・・・与える・・・命・・・源・・・』。待てよ、もしやこれは古代聖典の詩編をなぞらえてるのか? だとしたら・・・」
ブツブツと呟いた後、ロベルトは石碑に向き直ると声を大きく張り上げ唐突に文字を読みだした。
「『先史の神々より恵み与うる命の源。
その前途に抱くもの。
人の庶、地の幾。
生きとし生けるもの。
希う万感、誓言に嘱す光の先。
立ちはだかる悪しき闇。
数多の祈りと祝福のもと。
光芒の弩現れん。
負の力孕みし輩、陋劣なる心諸共に貫き殲滅せしめん』」
回廊に響くロベルトの声。
何も起きない。
筈だが・・・・・・。
ゴ・・・ゴ・・・ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・。
「な、何だっ!?」
「地震か!? いや、これはっ!?」
答えるかのよう地鳴り呻く遺跡。
驚くハンスとロベルト。
目の前のオベリスクが動き出したのだ。