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Re: 魔断聖鎧ヴェルゼファー ( No.7 )
日時: 2014/12/30 13:04
名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: aq6f.nuq)





 突然轟音と共に動き出した古代遺跡。

 目の前のオベリスクに幾重にも亀裂が出来ると、まるで積み木の玩具のように複雑にその形をブロック状に組み替えていった。

 するとオベリスク全体が光り輝き始めた。

 空洞全体を包むその強烈なフラッシュバックに思わず顔を覆うハンスとロベルトの二人。 







 次の瞬間、二人は今まで居た遺跡とは全く異なる光景を目の当たりにする。







 何処までも広がる巨大な、天を突く高層の都市群。

 それは遥か古に滅んだ古代の文明を彷彿とさせる。

 そして二人はその遥か上空に浮かぶように佇んでいた。

 「こ、これは一体・・・」

 目を見開いて驚愕するハンス。

 「・・・俺たちは空を飛んでいるのか? 転移か? しかし、足元の感覚は確かにある・・・これは・・・」

 困惑しながらも冷静に自らが置かれた現状を分析するロベルト。

 そんな混乱の最中、大気を震わせる恐ろしい咆哮が耳を貫き轟く。

 同時に激しい爆発音、地鳴りが起こり、周囲の都市群が瞬く間に崩壊し、崩れ去る。

 二人が今度は何事かと顔を今しがた声が届いた場所を凝視する。



 黒い。

 そこだけ切り取ったかのような『黒い』何かが空間を埋め尽くしている。

 巨大。

 余りにも巨大すぎて最初何かは判らなかったが、それはとんでもなく大きな醜悪な物体だった。


 魔物デモドゥス


 しかも屹立する高層都市の塔を優に超すほどの体躯を持つ。

 上半身には悍ましい複数の触腕を生やし蠢かせ、下半身は蛇を模しているのか凄まじく長くうねり、蜷局とぐろを捲いている。

 顔には無数の複眼が光り、妖しく真紅の燐光を放っている。

 まさに化け物。

 此の世の終わりを体現するかのような容姿。

 その異形の割り開く鋭い牙が無尽に並ぶ口角。



 ————絶叫。


 
 「うぉおおおぉおおぉっ!!? コ、コイツはっ!!?」

 「魔物かっ!? なんてデカさだっ!! さっきの雄叫びはこの化け物の仕業かっ!!? ん!? 何かいるぞっ!!」

 二人はいつの間にか巨大な魔物の周囲に何体もの、いやどんどんと囲むように人型の物体が現れ始めたのを目撃した。

 それは暴れる魔物に武器を構え包囲をしている。

 数は既に百体を超えている。

 そして一斉に集中砲火を仕掛けた。

 「・・・あれは・・・鎧機マギナか?」

 ハンスが呟く。

 「戦うというのか・・・? あの巨大な魔物相手に・・・。数では勝っているはいるが・・・」

 ロベルトが眉を顰める。

 攻撃を受ける魔物は己を囲む者たちを嘲笑うように、鞭をしならせるように自身の巨尾を奮い、都市群ごと薙ぎ払った。

 衝撃波が辺りを襲い、全てを塵にする。

 「どうなってるんだっ!? 俺たちは何処に連れてかれたんだっ!? 畜生めっ!!!」

 「・・・落ち着け、ハンス。俺の見解が正しければ恐らく俺たちには何の被害も出ない筈だ」

 唐突に始まった鎧機と魔物の戦いにパニックになって焦るハンスにロベルトが静かに声をかけると眼鏡のフレームを押し上げる。

 「視ろ。この惨状の中でも俺たちには破片ひとつ処か、そよ風すら当たらない。不思議に思わないか?」

 ロベルトが促す様にハンスに顎で射す。

 「・・・た、確かに。まるで古代の映写機械をどデカくして見てるみたいだ・・・。 !? まさか、これはっ!?」

 はっと何か気付いたハンスがロベルトに振り返る。

 「その通り。今、目の前の『これ』は実際に起きている事じゃない。今俺たちが『見』ているのは唯の『映像』だ・・・・・・それも、恐らく過去に起きた人と魔の大戦の・・・」


 ロベルトの眼鏡のレンズが映像を反射し、映し取った。