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- Re: 魔断聖鎧ヴェルゼファー ( No.8 )
- 日時: 2015/01/10 23:18
- 名前: Frill ◆2t0t7TXjQI (ID: Jhl2FH6g)
それは語るには筆舌にし尽くし難い戦いだった。
漆黒の巨体を縦横に暴れさせる魔物。
それに対する数百を超す鎧機。
群がる羽虫を払うかのように鎧機をことごとく破壊する魔物。だが、次から次へと現れる増援が空を埋め尽くし執拗に攻撃を繰り返す。
両極の戦闘に巻き込まれた周辺の都市群は見るも無残に徹底的に蹂躙され、煌びやかな絢爛さを誇る高度文明は地獄の有り様を露呈していた。
破壊されても変わりはいるとばかり出現する鎧機。
後から続々と湧いてくる敵に業を煮やしたのか、巨大な魔物は自身の頭部に連なる無数の複眼を凄まじい速度で明滅させ始めると大きく顎口を開放した。
すると空が瞬時にして暗転し蔭る。
魔物の開口部に深淵の闇と呼ぶに相応しい禍々しい暗黒の波動が一点に集束される。
と、同時に一切の音という音が遮断された。
無音の世界。
瞬間————。
黒い光が迸った。
「・・・・・・ッッッッ!!!!!」
数多の鎧機を消し去る破光。
貫き穿つ終極の帳が都市を寸断し、地上を焼き払う。
形あるすべてのモノを灰塵に帰す黒の閃光。
忘れていたかのように僅かに遅れた衝撃の波がそこに存在する物質を飲む込む。
どう表現したらいいのか、言葉に変えればいいのか、最早理解の範疇を超えている。
赤々と燃える場景に揺らめき照り出される真黒の破壊者。
これは戦いと呼べるのだろうか。
ロベルトとハンスは言葉を発する事も出来ず、只々呆然と諦観していた。
これが映像だとしても過去の歴史にこれ程の人間と魔物の争いがあったなどと露とも思っていなかっただろう。
仮にこれが真実だとしてもこんなモノを見せられて自分たちにどうしろと言うのだろうか。
途方に暮れる二人が見つめる中、今だ渾沌する戦場に巨躯の魔物が突然何か反応したようにその醜悪な顔を上空に向けた。
その動作に釣られてハンスとロベルトも上空を見上げる。
凶炎に見舞われる地上の灯りに蒼穹は朱色に染め上がり、赤い雲を覗かせる。
その雲間が突如として割り開き、神々しい輝きを射し出した。
「ありゃぁ、一体何だ・・・?」
手をかざし眩しそうに眼を細めるハンス。
「まさか、天使・・・なのか・・・?」
白光に顔を顰め抵抗しながらも凝視するロベルト。
天から白銀の遮光を纏うものが降臨したのだ。