コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: EUREKA ( No.102 )
日時: 2015/03/22 14:03
名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: nlCdadAl)
参照: その時あの人女装してゲフンゲフン


*番外編

 +レンアイコンペンセーション+


「……眠い」

 短剣をブスリと目の前の物体に突き刺し、悲鳴を聞く。
 ——あきた。

「どうしたい?」
「ゆ、許してくれえええええええええ」
「そっか」

 真っ赤な色を垂れ流しながら叫び声を上げ続けている太ったおじさん。私と紫色の少年の仇、というやつだ。身体の色々なところから、私の持っていないものを溢れださせる物体に、私は“興奮”でもしていたのだろう。
 紫色の少年——西園寺詩音のことは、昔から知っていた。一度だけ、顔を合わせたこともあった。ブルート街で捨てられ、人が目の前を通り過ぎていくなか、西園寺詩音は私の存在を認識し、手に取った。

「傷とかは……ないですよね? ……あっ、……あとでまた来ます」

 返事が出来ない相手に、何を言っているのだろう。
 それから一時間と経たないうちに、私はゴミとして回収された。

「じゃあ、許してあげるよ」

 西園寺詩音の魔法——呪い——により、クレーエは不死となっていた。と言っても、脳を貫けば終わるが。剣を前述のとおり刺すと、短い悲鳴とともにクレーエは動かなくなる。

「ヤリスギタ、かな?」

 私を捨てる前にクレーエが言った言葉を投げるが、その頃の私のように反応はない。


 *


 ブルート街は変わった。私が今、ここの領主と言うことになっている。クレーエは行方不明。
 今はまだ復興中だが、明らかに良くなっている自身がある。西園寺詩雲の出していた条約を復活させている。
 そして今、私の部屋にはとんでもない量の人形が並べられている。全て街で回収した者達だ。中には私が作った人形もいる。時々小さな子が遊びに来ては、欲しいとせがんで来る。「大切にして欲しい」と頼むと元気な返事が聞こえて来る。実際どうなのかはわからないが、何人かは渡した人形を持って遊びに来るため、良くしてもらっているのだろう。

——リン
「何?」
——大分前から思ってたんだが、お前、恋してるだろ
「……?」

 こい? 故意? 鯉? ——わけがわからない。
 人形に感情があるのか。答えはどちらでもないだろう。考え方による、とも言う。

——いやあ、とうとうお前もそんな時期かあ
「対象は?」
——西園寺詩音
「……気持ち悪い」
——気持ち悪いとか言うなよ。……まあ、そう言うのもある意味感情だな

 なるほど。表情が変われば感情も変わる、と。
 クロムは私よりもあとに生まれたけれど、私よりも感情の知識が多い。理由は私は人形で、彼は私が動けるようになってから生まれた(派生した?)存在だからだろう。

「どうすれば?」
——知らん。俺が恋したことあるとでも?
「……ない。それに、西園寺詩音には思い人がいる」
——白い軍人もどきか?
「違う」
——じゃああっちか。緑のロリ。お前って他人のことになると敏感だよな
「言い方、なんとかしようよ」

 緑色の少女は西園寺詩音の“やすらぎ”とも言える存在。
 何はともあれ、これがコイだろうと私はそんなもの必要ない。これは人形だからではないが、理由はわからない。

——お前、ホントに自分のこと考えないよな
「そんなことない」

 とにかく今私が考えることは、ブルート街の復興と、西園寺詩音の幸福である。

「リンおねぇちゃーん! あーそーぼー!」
「——うん、わかった。少し待ってて」

 人形が置いてある棚を見る。そこには、菫色の長髪を、真っ赤な紐で縛った人形が座っていた。