コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: EUREKA ( No.111 )
- 日時: 2015/04/12 04:01
- 名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: nlCdadAl)
- 参照: 豪雷の名前、凄く悩んだんですよ(現実)
砂漠のような空間に、豪雷は独りでいた。
『来たか』
「お前は、誰だ?」
『その刀に宿る獣、と言えばわかるか?』
「……雷獣」
『正式に言えば、“雷神”だが』
雷とともに目の前に現れた、鋭い爪を持ったタヌキと仔犬を足して割ったような生物——雷神。
『この刀は本来、“雷神刀”と言う物で、我が許可しない限り、能力を最大限に引き出すことは不可能だ』
「……?」
『……お前は馬鹿か。つまり、先ほどのお前のヘマで小娘が負った怪我は大したことないってことだよバァカ』
「あ、ああ。なるほど。……良かった」
散々言われたが特に気にしていない豪雷に、雷神は本気でブチ切れてやろうかとも思ったが、小さい身体を動かしながら豪雷の傍らまでやってきた。
『お前は、魔王を討伐してどうするつもりだ?』
「俺は、魔王を倒して、……。ふむ」
『……わからない、と言うことで良いか?』
「そうなるが。……旅に出ようと思っている」
『ほう。今の旅では不満か?』
「悪くはないとは思う。魔王を倒すという目的を制覇し、目的のない旅をしたい」
雷神はふむと頷き、豪雷を見上げた。
『お前、空は好きか?』
「ああ。今は亡き者となってしまったが、父と母は俺に“空”という名前を付けようとしていたそうだ。晴れ、曇り、雨、雪、雷……。人の感情のように、沢山の顔を持っている。大好き、だな」
『……ふっ、はっはっはっは』
「なっ……!?」
唐突に笑い出す雷神に豪雷は驚く。
雷神は少ししてからにやりと口角を上げた。
『——我が主よ』
*
「——ッ!」
振りかぶられていた刀を押さえ込み、そのまま取り上げる。相手は舌打ちとともに距離をとり、それを認識してから豪雷の意識は現実へと戻った。
「なるほど。……」
鈴芽を視界に捉えると、豪雷は安心したように溜め息を吐いた。それから狼を睨みつけ、刀を相手へ向かって突き出した。
「——我は汝と契約を結ぶものなり」
目を閉じ、相手の姿を認識しながら刀を空へ掲げる。
「——雷を司る神よ、汝の裁きを今ここに仰ぐ!!」
その言葉を唱え終えると同時に、狼は今までにない程の笑顔を見せた。
「来い!」
遠ざかる意識の中で、最後に聞いた声。——落雷音が響き渡った。