コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: EUREKA ( No.115 )
- 日時: 2015/04/19 04:22
- 名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: nlCdadAl)
「ましろん、何か思い出せた?」
「むー……。カインさん、この人たちはしろのこと知ってるの?」
「うん。真白の友達だよ」
「友だち……。しろのお友だち、こんなにいないよ?」
「その“お友だち”って、なんて名前?」
「ちはやとアレンと……デジェル。他にもいたけど、どっか行っちゃった」
どこかへ行ってしまった、という言葉に疑問を持ったが、“デジェル”と口に出した時の悲しそうな表情に、これ以上悲しませてはいけないと本能的に察する。
その時、風蘭があっと声を上げた。
「なんか、絶対にダメな感じの風がびゅおおおおってしてる!!!」
「どんな風だよ!?」
「日向どこ向かってるのかな」
蓮の盛大なるツッコミはある意味完全に無視されるが、確かに「絶対にダメな感じの風がびゅおおおおってしてる」からわかることは危険だということくらいだ。充分だが。
直後馬が急停止し、車内ががくんと揺れる。外を見れば、竜人の群れがにたりと笑いながら鉄の棒を振り下ろしていた。
「——なんか、見覚えのある顔があるな」
*
——嫌だ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだいやだいやだいやダイヤダイヤダイヤダイヤダ
「ねえ、出してよ!」
「うるせぇ!」
そう。本当にうるさい……。目の前で打たれる子も、それを見て笑っている男の人も。
手錠を引っ張られ、石でできた牢屋へと連れ込まれた。
「えっと、氷姫……希少種だな。とりあえずエーテル封じの手錠は掛けといた方がいいな。……」
よくわからないことを言いながら、しろの手首にはさっきとは違う手錠と、足枷がつけられた。
その人が出て行って少し暇になった。“エーテル封じ”とか言ってた手錠を見て、実験してみようと思った。
「キュール」
手の上に小さな氷の玉が出来た。前つくった時より小さいから、多分本当に“エーテル封じ”として役に立つんだと思う。封じ切れてないけど。……次誰か来た時、言った方がいいのかな。
そんなことを考えながら氷の玉を消した直後、向こうから何やら騒がしい声が聞こえてきた。
「放せよヴォケがぁあぁ!!!」
「えぇい黙れ! いくらあの方の子供だからって、手加減はしねえかんな!?」
「あの方!? あのクソ親父とオレをくっつけるなぁああああああ!!」
「ぐぼぉ!?」
最終的に男の人を引きずるかたちで、しろの視界に入ってきた男の子。しろの苦手な炎の色をした、肩くらいまである緋色の髪の毛と、しろや他の子たちが着てた汚れた服。
「で? ここに入れば良いってことか? あ? 早く答えろ! はい、吐け!!」
「ぐ……あ、ああ、そこだ。さっさと入れ……」
ぶつぶつと文句を言いながら男の人を蹴る緋色。じっと見ていたら、向こうがこっちを向いた。今まで見たことのない、炎の色とは違うけど、とても似ている色の瞳が、完全にこちらを確認した。
「……」
しばらく動きを止めてしろを見ていたその子は、男の人が「早く入れ」と言うと即座に相手を蹴って、しろと同じ牢屋に入った。
男の人がよろよろと出て行くと、炎の色の男の子はニカッと笑った。
「はじめまして。オレ、不知火千破矢ってんだ」
よくわからないけど、名前を言えば、良いのかな。
「由利、真白。……?」
「へぇー。見た目通りの名前だな。これからよろしくな!」
「ふぇ?」
千破矢という子は、自分の手錠をジャラジャラと鳴らしてから、伸びをした。
「オレの名前は、破魔矢から来てるんだ。千の破魔矢、千破矢ってな。破魔矢ってのは、魔除けみたいなもので、……って、よくわかんねぇよな。ごめん」
「……んー、よくわかんない。でも、面白い、ね」
しろみたいな、説明するまでもないような名前より、物語のある名前の方が良い。
初めて聞く言葉や、物の意味。——すごく綺麗だと思った。