コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: EUREKA ( No.116 )
- 日時: 2015/04/19 05:11
- 名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: nlCdadAl)
- 参照: これが軍人への扉でした。
「おら、入れ!」
「うぇ……やだよこんな薄汚い部屋。ぼっちじゃないから問題ないけど」
あれから数日後、アレン・ライトは来た。
「はじめましてーっ、オレ、アレンって言います! これからよろしくねっ」
「お前よくここでそのテンション……」
「……千破矢、男の人蹴り飛ばしてた」
「るっせー!」
アレンが来た時、なぜかしろと千破矢の足枷は取られた。アレンはまだつけっぱなし。
「オレは不知火千破矢だ。んでこっちが……」
「……由利真白」
「千破矢くんに、真白ちゃんかー。うん、そうしよう!」
「はぁ?」
「家族ごっこしよう!」
茶色くて短い髪の毛をぴこぴこと揺らしながら、アレンが千破矢に詰め寄る。その際足枷は意味をなしていなかった。
「家族ごっこ? って、なに?」
「家族になったふりする遊びだ。オレは現実の家族がある意味家族じゃなかったからイマイチわかんねぇや」
「大丈夫! なんとなくで良いから! 真白ちゃんはどう?」
「わかんない。やってみる。……家族」
はく兄、お父さん、……カインさん。みんな、元気にしてるかな。
コトリ、と何かが音を立てた。しろの足元には、小さくて丸い玉が落ちている。
「うわあ、何それ綺麗」
「どっから出したんだ? ……大丈夫かお前」
「……うん」
目の下が少し濡れている。両腕は繋がってるから、少し腕をねじって拭った。玉を拾って、自分の後ろに隠す。
「家族ごっこ。お母さんとか作るの?」
「それだとなんかあれだよな。お母さん候補一人しかいないし」
「別に男でもよくない?」
「じゃあお前がするか? オレお前と結婚したとか絶対やだし、子どもになるのもなんかしゃくだ。却下」
「えーっ! じゃあどうすればいいのさ! 真白、なんかある?」
「……みんな、兄弟」
「「よしそれだ!」」
どっちが兄だ、と言いながら二人が言い争っている。
その時、この前千破矢にひどい目にあわされていた男の人が来た。二人は気付かなかったから、代わりにしろがそっちに向かう。
「やあ」
「こんにちは……?」
「これ、本」
「?」
「あげる」
「……ありがとう?」
そう言って足早に去る男の人を見送り、牢屋の隙間から貰った数冊の本を持って、元の位置へ戻る。ずっと座っていたからか、生温かい。
本には“氷神騎士ブラン”と書かれていて、男の子が可哀想なまでに“悪役”みたいなデザインの人物を睨みつけている表紙が描かれている。どうやら小説のようで、字がずらりと並んでいる。
どうせ二人の口論は続くだろうし、これでも見ておこう。
主人公は最初から世間知らずさを披露し、間抜けな描写があった。だが、戦闘になると一変し、無情な描写とその中に紛れ込むもとの優しさをコントロール出来ない。というような物語。
——これが、ある意味“初恋”。