コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: EUREKA ( No.117 )
- 日時: 2015/04/19 05:48
- 名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: nlCdadAl)
「——よし、とりあえず、オレが長男、アレンが次男。真白が長女で末っ子な!」
「ちぇ、オレが長男がよかったー」
「じゃんけんで決めたろ?」
「……でも足でじゃんけんする必要はなかったと思うなぁ」
二人が真白に近づき、声をかけた。
「真白ちゃん、何読んでるの?」
「オレらが放してる間に誰か来てたみたいだけど、貰ったのか?」
「……この本、この前千破矢がやっつけた男の人がくれた。すごく面白いよ」
「へぇ……、うげ、これ漫画じゃねぇのかよ」
「で、結局どうなったの?」
「え? ああ、千破矢くんが長男で、オレが次男になって、真白ちゃんが末っ子だよ」
「わかった。……僕が末っ子なのは確定だったんだね」
「「……?!」」
「今僕って言った?」
アレンが驚愕を顔に浮かべた。
「ほんとだ。今僕って言ってたかも。まあ良いや。どういう設定?」
「……うん。えっとね、三つ子設定で、親は他界。まだ子どもで家は貧しいから、みんなで働いてるって設定」
「重い」
「でもそうしないとこの状況を楽しめないじゃん」
「いや、設定が重い」
せめて親は他界という設定を消してほしい。なんだか辛くなってくる。
そんなこんなで、僕たちの“家族ごっこ”は始まった。
「M-46」
「……行ってくる」
「おー」
「気をつけてな」
M-46。ここでの僕の名称。今日は小部屋に入れられ、機械相手に戦うとのこと。戦闘経験は皆無のため、すぐに息切れしてしまうが、慣れれば簡単。
「シュネー」
そう唱えると、あたりに雪が降り、機械は微動だにしなくなる。それを確認すると、部屋の隅にあるマイクのような所から声が聞こえてくる。
『本日の検査は終了しました』
これが家族ごっこの“仕事”。
他の子たちには必ず大人の人が付いている(千破矢とアレンも例外ではない)。でも、僕にはそんな人いないし、何なら今日の食事を渡してくれた人に「鍵、閉めといてね」などと言われる始末。ちなみに先日、手錠も外された。
牢屋へ戻り、二人がいないことを確認する。牢屋の鍵を閉めると、リンゴとパンを一緒に渡された布の上に置く。こうして、全員が揃うのを待つのが決まり。
しばらく経って、アレンが大人の人と帰ってきた。
「おかえり……」
「ただいま」
やけにテンションが低い。
大人が牢屋の鍵を閉めていなくなると、アレンは貰ったパンとリンゴを僕と同じように布の上に置いた。
「どうか、したの?」
「……ううん。なんでもないよ」
それからすぐに千破矢が戻ってきた。余談だが、千破矢と一緒に来る大人は必ず鎧を装備している。おそらく初日の惨事が原因だろう。
「おかえりなさい」
「おかえり」
「おー、ただいま! 飯食うか!」
その時、アレンは笑顔だった。
夜、部屋の隅で寝る僕は、聞きなれない音でふと目が覚めた。聞いてみると、近くで誰かがすすり泣いているような——。
「オレ、真白ちゃんがあんなことさせられてるなんて、知らなかった……」
「あんなこと?」
「……オレは、ずっと質問とかばっかりだった」
「……?」
「この施設の中では、真白ちゃんだけなんだよ。——戦闘教育させられてるの」