コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: EUREKA ( No.118 )
- 日時: 2015/04/25 04:11
- 名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: nlCdadAl)
あれ以来、“兄役”2人の僕へ対する態度は変わってしまった。
前まで気軽に話しかけてくれたのに、今は心なしか遠慮が混ざっている。大丈夫、なんて聞かないで。——気持ち悪いよ。
最近は、千破矢→僕→アレンの順番で帰ってくることが増えた。千破矢が帰るのは、僕が帰る時間とほぼ同じで、時々後ろ姿を見かける。ただ、アレンは常に遅かった。ひどい時は、次の日僕が牢屋を出るくらいの時間に戻ってくる。
今日も戻ってくると、千破矢が牢屋——部屋の隅っこで丸まっていた。
「ただいま……」
返事は、ない。
荷物を置いて、いつも通り千破矢の隣に座る。おそらく寝ているのだろう。反応がない。もたれかかると僕にとっては熱すぎる体温が伝わってくる。——最近知ったことだが、千破矢はフェニックスらしい。——
「僕ね、最初君を見た時、少しだけ怖かったんだ。——その炎の色が、いつか僕を焼いちゃうんじゃないか、溶かしちゃうんじゃないかって。でも、違った。それは、僕が大好きな色。……僕が大好きな人の色」
不意にあくびが出てくる。——眠たい。
がちゃがちゃと音が聞こえてきて、牢屋の扉が開く。そこにはアレンがいた。
「ただいまっ」
「おかえり。……どうかしたの?」
「今日はいつもより早いでしょ!」
「うん。まだ、帰ってきて少ししか経ってないもん……。何があったの?」
「ふふっ。……これでちゃんと、お兄ちゃんになれる」
小声で呟かれたその声は、僕の耳にしっかりと届いた。
そのあと、千破矢を叩き起してから久しぶりに3人で晩御飯を食べた。
事件が起こったのはその数週間後。僕らは同時に呼び出された。全員別の部屋へ別れ、扉をあけると真っ白な台がぽつんと置いてあった。
「M-46で間違いないな?」
「……あってる、はず」
「では、これより実験を開始する」
その言葉を最後に、僕の意識はぷつりと切れた。
*
「——……レン! アレ……ン!!」
叫ぶような、すがるような、……千破矢の声に、真白の意識は覚醒する。眩しさで一瞬目を閉じ、体が戻っているかを確かめる。それから、声の主を探そうと顔を上げ——
「あ……」
そこには、手錠——おそらく“エーテル封じ”の物——で拘束された千破矢の首を絞めている存在。少し赤みを帯びた茶髪と、真っ黒な衣服を身に纏った少年。
その少年の琥珀色の瞳は千破矢へとまっすぐに向けられていた。
「……アレン?」