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Re: EUREKA ( No.120 )
日時: 2015/04/26 22:16
名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: nlCdadAl)
参照: わかったこれはアレン編なんだねなるほど((


「はぁ? 兄を奪還? ……オレはアレンだよ」
「そうか……。とりあえず今出そうとしている炎を抑えてくれ」
「やーだね!」
「……」

 尻もちをついたまま攻撃を放つが、真白は先ほどと同じようにかわしてしまう。——だが、アレンはにやりと笑った。

「じゃあね、千破矢兄さん」

 真白の背後にいた千破矢へと、矢の形へと姿を変えた炎が飛ぶ。

「フロッケ」

 その言葉がアレンの耳に届く頃、炎の矢はジュッと音を立てて消えていた。

「は……、お前、魔法使えないはずじゃ——」
「使える。否、使えた。アレンが来る前から、千破矢が来る前から。“しろ”の魔力は封じきれていなかった。ここも、同じ」

 淡々と言い放つその言葉は、アレンの心を破壊していった。

「今思えば、しろの力は伸ばせばいくらでも伸びた。実際両親がいなくなるまでに平均を大幅に超えていた。カインさんと一緒にいて、異種族と初めて戦った時も、力で相手をねじ伏せてしまった。寝ていたら、捕まってた。……死にたいと思ったこともあった」

 千破矢が目を見開いた。少し間をおいて、「でも」とアレンの前に座った。

「アレン、千破矢。2人に会って、そんなことないって思えたんだ。だから——」

 ——戻って来い。


 *


 ——オレさ、真白ちゃんだけ訓練してるって知って、なんでだって抗議したんだ。そしたら、その日からいきなり真白ちゃんと同じ検査することになって。真白ちゃんが出来るなら自分も出来る、とか思った。けど、違った。真白ちゃんは普通よりも遥かに上、オレは普通の下の下。格が違ったんだ。
 ——帰るのが遅くなって、千破矢とはよく話したけれど、真白と話せる時間がなくなってしまった。なのに、千破矢と真白は仲が良くなって行く。いつか、真白がオレの存在を忘れてしまうんじゃないかって思ってしまい、怖かった。やっと追い付いたと思ったのに。オレの努力が実るまでの半分も満たない内に、終わりが来てしまった。
 ——あの建物にいたのはオレじゃない。オレのカタチをした“憎悪”と“不安”、“むなしさ”。それだけだった。

「この先に、みんないるはずだよ。これ、牢屋の鍵」
「おう。……アレンは来ないのか?」
「オレは、言ったらダメなんだ」
「なんでだよ? 一緒に来れば良いじゃねェか」

 先の見えない廊下を見て、悲しそうに笑う姿に、真白は「ああ」と察し、千破矢の腕を掴んだ。

「……ありがとう。アレン兄さん。次会う時は、2人で話をしよう」
「ふふ、こちらこそ。じゃあ、——またね」

 黒い衣服をなびかせ、突風が吹き荒れる。2人が目を開いた時、アレンの姿はなかった。

「どういうことだよ」
「……落ちた果実は戻らない」

 そう呟く真白の顔は、相変わらずの無表情だった。