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Re: EUREKA ( No.135 )
日時: 2015/06/07 05:02
名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: nlCdadAl)


 一方こちらは出発とともに、女子軍3名の何とも言えない雰囲気に惑わされていた。
 真白は荷台の隅で丸まっており、風蘭はど真ん中で丸まり、蓮はその隣で風蘭を包むように丸まっている。

「なんですかこれ。丸まらないと気が済まない病みたいなのが存在するんですか」
「女子で元気なのあたしだけ?!」
「鈴芽は基本的に悩みがなさそうですよね」
「それどういうこと!? あたしだって悩みの一つや二つ!」
「言ってみろよ」
「た、例えば……、そう、恋の悩みとか?」
「はい没ー。あ、日向。今どのへんだ?」

 「何これどういう状況」、「カオス」。そんな言葉がお似合いなメインキャラの一行。
 真白はそのやりとりを聞き終えると深いため息を吐き、ゆっくりと起き上がる。いつもとは似ても似つかないレベルの遅さで武器の手入れを開始した。

「カインいなくなってショック的な……?」
「否……。我が軍、一生の不覚……ッ」
「本当に何があった?!」

 状況は悪くなる一方。
 その時、運転手である日向が後ろに声をかけた。

「今近くの村に生還者がいるんだってさ」
「せーかんしゃ?」
「魔王城に立ち向かって帰ってきた人。倒せなかったみたいだけどね」
「えっ、本当?」

 がばりと起き上がった蓮が食い付くと、真白の体がビクリと跳ねる。千破矢はそれをばっちり目にしていたわけだが、あえて触れないことにした。

「魔王の弱点とか、何か情報貰えるかなぁ!」
「……まあ、そういう情報ももらえたら良いな」


 *


 近くの村——といっても真白の武器手入れがひとつ終わるほどの時間はあったが——へ着き、詩音が風蘭を負ぶって荷車を出る。そこにはすでに人の群れがあり、瞬時に“生還者”の場所を把握する。

「魔王って今どこにいるんだ?」
「ターニャじゃなかったか?」
「えっ、オレはシュヴァって聞いたけど……」
「私はゼウスに隠れ住んでるって……——」
「魔王は色々なところをまわってるって聞いたよ」

 数人の男女がそんなことを話しながら去って行く。

「すごい人の量……。どうする?」
「少し時間をおいてから、って感じで行こうかな」

 蓮はこれからパレードがあるかのような人だかりに若干引きながら答えた。とりあえず荷車の中で待機ということになり、真白と千破矢以外は戻る。

「真白? 戻らねぇの?」
「うん。なんか、懐かしいエーテル……魔力? どっちだろう。それがある」
「エーテルか魔力かはどーでも良い。とにかくあっちにそれっぽいのがあるんだな?」

 人ごみへと視線を移しながら千破矢は真白に聞く。
 こくり。そう真白が頷くのと、人ごみのど真ん中の鎧を着た男と千破矢の目が合うのはほぼ同時だった。