コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: EUREKA ( No.148 )
- 日時: 2015/07/12 09:21
- 名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: nlCdadAl)
——うわあいつめっちゃ起きてんじゃねェか。
ひとり残されたシルアは真っ先にそう思った。そして同時に、なんであんなに話したんだろうという疑念が浮かぶ。
「……俺もそろそろ末期か」
窓を開け、いつの間にか勝手に群青色に染まっていた空を見上げる。この空間は時計以外に時間を伝えるものが存在しない。空の色は常に青系統で統一されている。
そして、ここにはいつも自分以外の生物が存在しない。最近は詩音がよく来てくれるため暇ではなかったのだが、昼間はいわゆるぼっちである。せめて動物でもいれば——
「せめて動物でもいれば。そう思ったあなたにpresent!!」
「ぎゃああああああ!!?」
「なんですか。せっかく吸血鬼が心配して見に来てあげたというのに」
「……」
——さっき帰っただろお前。
完全に不意をつかれたシルアを嘲笑うかのように詩音は両腕で抱えている生物を見せる。
「どうですか私の精神パワーモドキ」
「精神的に(ダメージが)に来る。どうした」
「起きた瞬間どういうわけか千破矢の鉄拳が飛んできましてね」
「気絶じゃねェか! ってか俺が聞いたのはその生き物だ!」
「だからプレゼントですよ」
鷲程度の大きさの、緑混じりの青い鳥をシルアの頭に乗せる。
「では起きてきますね」
「いや待てこいつはなんだ?!」
「プレゼント」
「……どうやって持って来たんだ?」
「庭にいたので」
「マジか」
——そこまで成長したのか。
鳥を頭から引きはがし、クチバシを掴む。
「その辺で放置するのもあれなので、生物でもいればと思ったシルアにあげますよ」
「てかなんでお前俺の心読んでんの……」
「ほぼ勘だったのですが……、当たっていたのですね」
「?!」
普通勘でそこまで当ててくるか? そんな疑問を表情だけにおしとどめ、代わりに鳥の羽を撫でまわす。
「気に入ってくれたようでなによりです」
「……あと、こいつの名前は?」
「ないです。適当に決めてやって下さい」
「えーっ」
「では戻りますね! ノシ!」
「ノシとか言うなよてかそれある種の顔文字……」
言い終わる頃には詩音の姿はなかった(言い方を変えると逃げ足がはやい)。窓の外に顔を出し、鳥を解放する。
「シルア……、詩音……。面倒だな。シアンで良いや」
“し”から続く名前を考えた結果、その鳥の色合いに合わせた名前。
シアンは屋敷の上空をグルグルと飛び回っていて、しばらく帰ってくる様子はない。どこか遠くを見つめながらシルアは誰にも聞こえないような声で呟いた。
「そろそろ——、だな」