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Re: EUREKA→KEEP THE FAITH ( No.181 )
日時: 2015/10/26 18:16
名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: 5YqwrR3X)


 他が食事へ向かい、だだっ広い部屋にベッドの上の存在と夜行性2人が残される。扉が閉まると、詩音は真白へ向きなおった。

「先程からやけにこの方を気にしていましたけど、どうかしたのですか?」
「……この人からカインさんみたいな気を感じた」
「気……、ああ、エーテルですね」

 唐突の“気”発言に詩音は戸惑うが、狼を一瞥し納得する。

「身体検査して良い? 狼の」
「え」
「大丈夫。上からだから」
「上からって。別に構いませんが……?!」

 許可をもらうと同時に真白は狼の胸部に拳を繰り出す。骨が折れたのではないかと言わんばかりの鈍い音が響き、数秒してから拳が上げられた。

「怪我なし、精神は少し危険だが問題なし、……ふむ」
「むしろあなたの攻撃で怪我したのでは?」
「もし万が一僕が怪我させたら治すよ。あとカインとフェイの痕跡発見」
「この人、他人の魔力溜めるの好きなんですかね?」

 いつぞやの初対面時騒動を思い出し、詩音は苦笑する。丁度その時、狼が咳きこみながら起き上った。

「おはようございます。もう夜ですけど」
「大丈夫か? 何があったかさっさと吐け」

 看護対象へ対するこの態度。狼はなんとも言えない表情をしたが、詩音を見た瞬間飛びついて来た。

「シオン!」
「うえぁあっ?!」
「……何この構図」

 ベッドに足を乗せたまま詩音へ飛び付くことにより、狼の胴体は完全に浮いており、しかも詩音と真白の距離はそこそこ近かったため至近距離でその光景を見ることになってしまった真白。

「真白助けて下さい」
「えぇ……。五月雨狼さん、あなたは狼さんですよね? 今あなたは落ち着きを欠いています。由利真白と一緒に深呼吸をしましょう。せーの、ひっひっふー」
「ちょ?!」

 それは違う。


 *


「——も、申し訳ない」
「いえいえ。あとで倍にして返しますので安心して下さい」

 ベッドの上で土下座をする狼と、狂気を帯びた笑顔を向ける詩音。
 結局真白が氷を狼の背中へ乗せていくという凄まじい行動に出たことで——結果的に狼は床へと落下したが——なんとか落ち着きを取り戻した狼。……何故落ち着けたのかはわからない。

「そ、そうだ。真白はいるか?」
「はい、真白だよ。何があったのかな?」

 そう言いながら真白の背中に隠された腕は、小刻みに震えていた。