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「……ねえ、千破矢」
「ん？　なんだ？」
「僕は今気付いたんだ」
「ほう」
「——僕探知能力持ってたわフェイ見つけたし」
「ええええええええ！？」

　一方がシリアスな雰囲気のなか、こんなノリの２人。

「え、フェイどこにいるんだ？」
「エアヴェルメン」

　呪文と同時に半径１０メートル程度の雪が湯気を立てて消え、見覚えのある赤毛の——

「いたあああああああ！！！　ってか今使ったの確実に炎魔法ううううう！！！」
「うるさい」

　千破矢がフェイを荷車に運び、真白は探知出来る範囲を探して馬を操る。お姫様な軍人曰く「凍傷は僕の魔法では治せない。何故なら僕が凍傷を負うことがないからである」。要約すると、とりあえず温めろよフェニックス。

「千破矢、フェイ何か持ってたりしない？」
「例えば？」
「カインさんの魔力が嫌でもこびりつきそうなもの」
「知らんがな」
「あ、やっぱいい」
「どっちだよ！」

　真白は持っていたマフラーを使ってもう一度探知をする。

「発見！　カインさん発見！　でもなんかすぐ隣で変なおばさんのオーラがする！」
「変なおばさん！？　テンション高いなおい！！」
「何こいつちょっと待ってツインテとゴシック服なの？！　何お前カインの何！！？」
「大分荒れるな……」

　実際状況が見えているのは真白のみのため、千破矢には荒れ狂う姫系軍人を宥めることしかできない。——もっとも、こんな真白を見たことがないためとめる術はないのだが。

「フーッ……。ただいま。なるほど、把握」
「俺は全く把握していない」
「カインさんの魔力におばさ……げふん、女の人の魔力が混じってる。で、多分この女の人はゼノ」
「ツッコミどころ満載だがなるほどだわ」

　知らないうちにバージョンアップしてしまっている真白の技能を一番指摘したいところ。

「場所は？」
「遠い。まわりがやたらゴシックだった」
「室内じゃねェか」
「ちなみにそれがあったのはブルート街なんだけど」
「どこだそれ」
「……かいつまんで言うと詩音の故郷だね」

　数十秒の沈黙の後、千破矢が奇声を発したというのは特に関係のない話かもしれない。