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Re: KEEP THE FAITH ( No.189 )
日時: 2015/11/11 16:51
名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: 5YqwrR3X)


 雲に覆われた街へ着いた頃、千破矢は目を覚ました。

「おはよう」
「おう。……フェイはまだ起きてないな」
「君の熱が足りないのでは? 密着するか?」
「しない」

 一晩中ゆっさゆっさと揺れていた荷台で一度も目覚めなかった千破矢とフェイ。
 真白はブルート街に入ると領主の家へ向かった。今あの家にいるのは中年太りではなくリンが住んでいる。さらに言うならついこの間詩音が里帰りでここへ来たわけだ。——安全じゃなかったら逆に怖い。

「お久しぶりですね」
「……一週間ぶり。少し驚いた」
「でしょうねー」

 なんとまさかの家から出てきたのは詩音。千破矢はポカンと口を開け、真白は失笑した。家に上がり、詩音はリンのいる部屋へ案内する。
 社長室の様な間取りの四方には人形が敷き詰められているという奇妙な部屋。真ん中に机と椅子が4つ用意されている。その1つに腰掛けている黒い髪の少女——リンは3人を見上げた。

「あ、詩音と真白と……千破矢だっけ?」
「千破矢であってます」
「久しぶり」
「そうだね。あ、座って」

 席に座ると、詩音は増援として来たということや今現在知っている情報を伝えた。詩音もここへ来たのはほんの数時間前だとのこと。ちなみに狼はピンピンしているらしい。

「そうだ詩音、フェイ見つけたぞ」
「介抱はお任せ下さい。リンに」
「お前じゃないのか」
「私に任せてくれても構いませんが?」
「「やめた方が良い」」

 リンと真白の声が盛大に被るという大事件が発生。フェイを安静にしてからリンは口を開いた。

「クロムに代わる」

「さて、状況を纏めるぞ」
「話の主導権は君に任せる頼んだ」
「おう任せとけ」

 クロムはニッと笑い椅子から立ち上がると、部屋の隅にあるホワイトボードを持ってきて何かを書きなぐり出した。

「——と、こんなわけだ」
「「「わからん」」」
「えっとだな、まずフェイ?がいたのが雪山ってのでまあ捨てられてたんだな。オレ的には“仕留めたと思って放置した”んだと思うけど。それこそ人形みたいに?
 で、カインがこの街にいることからの推理としては“操ったやつがここの住人——吸血鬼である”ということで間違いないだろうな。ここは別種族なら餌としか思わんやつばかりだからな
 あとわかってる情報は“ゼノの一員”ってことだよな。何したかったのかはわからんが」
「ゼノの目的で今わかってるのは魔王を仕留めようとしてるということですよね?」
「じゃあ真白か詩音の方行ったら良かったじゃねェか」
「詩音は見るからに呪いに耐性あるだろう。僕は自害するくらいの心構えは出来ている。それに残念なことに僕よりカインさんの方が強かったりするから」
「「ふぁっ」」

 あの人は優しいんだよ。そう言いながら真白は3人から目を逸らすのであった。