コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: KEEP THE FAITH ( No.191 )
日時: 2015/11/15 02:00
名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: 5YqwrR3X)


「はい、これ地図。オレはやることあるから、同行は出来ないけど……。連れて行くなら——」
「千破矢、行こう」

 食い気味。真白に連れられ驚愕しながらも部屋を出る千破矢を見送り、2人は失笑した。

「もうなんだか、ブルートが大破しそうですね」
「それな……」

 ふと声が聞こえ、声の主——フェイを見る。ゆっくりと目を開き、驚いたように飛び起きる。
 クロムは急いでフェイのもとへ寄ると、若干焦りながら「大丈夫か」など声をかける。「名前は?」、クロムの質問にフェイは頭を押さえながら、2人を見て言った。

「お、れ……だれ?」
「……ほう?」

 実に興味深い的な感じの声を上げ、クロムはフェイの目の前に座る。

「お前、自分が何してたかとか全部忘れちゃってる——記憶喪失な感じか?」
「……?」
「クロム、直球すぎです」

 ——なんということでしょう。
 内心そう思った二重人格おふたりは、とりあえずホワイトボードを召喚した。

「……どうしよう? これもしかしたら最悪のpattern……」

 クロムがそう言いながら字を書き綴って行く。菫色の少年は椅子に座り、口元に人差し指を当てた。

「さて……、——どうなるんだろうなぁ?」

 歪んだ笑みを浮かべながら。


  *


「真白落ち着けって!」
「……」

 ブルートという比較的静かな吸血鬼の街を、2人の異種族が走り抜ける。1人は飛べない——劣化版不死鳥。1人は——軍人系チート氷姫。
 目的地へ着くと、真白は地図を見比べた。

「——地下」

 軽い音を鳴らし、真白は千破矢を連れて地下階段を下りる。真っ暗な部屋が広がり、真白が止まるとほぼ同時に薄暗く明かりが灯る。
 こつん、こつん。ヒールの音が響き、あの時真白が探知で見た女が出てきた。

「はじめましてですわね。氷族の真白ちゃんと、不死鳥の千破矢くん」

 笑顔とともにそう言い放つ女を、真白は睨みつけた。

「わたくしは、ルク・ルッテ。お察しの通り吸血鬼で、クロウド・カインを操っているのもわたくし……」

 余裕の笑みを浮かべながら近付いて来る、ルク・ルッテ。こつん、こつん。足音のみがその場を支配する中、白銀の少女は無表情で——内心激おこぷんぷん丸だがそれを表に出すことが出来ないまま——、たった一言。

「——どうでも良いからさっさとカイン返してよ、“ お ば さ ん ”」