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Re: KEEP THE FAITH ( No.207 )
日時: 2016/02/26 18:09
名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: 5YqwrR3X)


「鈴芽っ!?」
「——My expectation has come true.」
「いきなりめっちゃ綺麗に英語使いだした!!! 予想通りってどういうことですか? っていうか大丈夫そうでなによりですーっ」
「お金まだちゃんと持ってるよね?」
「ぇあ、はい持ってます」
「じゃあ、あたしが言ってからさっきみたいにお賽銭箱の中に入れてね?」

 鈴芽のターン。
 薄暗く埃まみれな部屋を見回す。まあ、本ばかりである意味他には何もないが。

「んん……、どこから見るかな」

 ふと目についた物は“オブ・ルクス神話”と書かれた青い本。よく見ると本棚の本の内容は全て、神話に関する情報だった。
 神話解説、神話派生作品、その他諸々。

「マジかー……。神話すげぇなマジで」

 ——これは、由緒ある(はずの)バンシーと詩姫のハーフの感想である。

「オブルク神話かぁ……」

 オブルク神話=オブ・ルクス神話。

「なんか内容的には“天界から人が降ってきて世界を救う話”だった気がするんだけど……」

 昔読んだ神話を思い出しながら解説と青い本を手に取り、青い本を開く。

「……あ、やばい。これはハマるpatternだ」


 *


 ——ようこそ、私のもとへ。

 物語はこの言葉から始まる。

 私の体を大地に変えよう。
 私の髪を草木に変えよう。
 私の涙を海に変えよう。
 私の思い出を星に変えよう。
 私の存在していた肉体、全てを使い、世界を創り直す。

 私は死ぬわけではない。
 この、美しき世界のひとつとして、生き続けるのだ。

 死なない——死ねない。

 この世界で生きとし生ける全ての存在よ、この世界を訪れる全ての存在よ。

 最初の言葉で物語は終了する。



 ——この物語は、誰の言葉なのだろうか。

 鈴芽の脳内でぽっこりと<?>が浮かび上がる。
 これは、誰視点の話なのだろう、と。

「鈴芽ー、生きてますかー?」
「生きてるよ! もう少し待ってて……」

 神話を解説したような手書きの本を開くと、
“永遠に刻もう。私のみてきた全てのことを——。”
という言葉に続いて“ツクヨミ”という名前。

「ツクヨミ……?」



「ポート、お金!」

 ちゃりんという音とほぼ同時に扉が勢いよく開く。

「どうでしたか?」
「んー、ちょっと色々凄いことになってるなぁ、と」
「ふむ?」
「挨拶してからグラギエスに飛ぶよ」