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Re: KEEP THE FAITH ( No.220 )
日時: 2016/04/21 00:27
名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: 5YqwrR3X)
参照: 獄都事変が大好きすぎて悶える日々


「机よーし、椅子よーし、日傘よーし、お菓子よーし、紅茶よーし。お茶会始めるわよぉ〜!」
「えっ、ちょっと、何があったのか誰か教えて……」
「お前があと5分早く起きてたらこんな面白いことにはならなかった」
「こんなむさくるしいことこの上ない茶会は初めて見た」
「良かったなカイン、お前のおかげで蛇から情報が貰えるぞ」

 華やかな装飾の施された家具を穴の上の荒野に設置した。

「何が悲しくてこんな荒野で男だけで茶を飲むのだろう」
「もぉう、失礼ねぇ! あたしは女よぉ!!」
「あっはいそう言った感じの設定でしたね」
「「やめてさしあげろ」」

 無言で日傘を見上げるフェイ。完全において行かれているカインと、あくまでも女と主張するオカマ。そして何を思ったのか冷静に暴走しているアレンとツッコミ的な何かにまわる狼と千破矢。
 ぶつぶつと文句を言いながらも全員が椅子に腰かけ——さて、カオスと書いてお茶会と読む。そんな情報共有会の始まりである。

「——結局、何から話すの?」
「おいそこメモ帳を準備するな笑っちまうだろ」
「ならまずは、あたしの持ってる話をするわね?」
「お願いしまーす」
「逃げないでね?」
「よくわかりませんけど約束は守りますよ?」

 首を傾げてふわりと笑うカインにその場にいた健全男子軍は素で「うわあ」と呟いた。カイン逃げないならアレン以外全員逃げれないじゃないかという意味で。

「まず、この近くにオブ・ルクスの秘境があるのは知っているかしら?」
「はい。そこへ向かう予定だったので」
「あらあら、どのようなご用件で?」
「ゼノについての情報がある、と聞いて」
「なぁるほどねぇ……。あそこには昔ね、——月黄泉蓮、っていう巫女様がいらっしゃったの」
「つくよみ、れん……?」
「そう。空に浮かぶあの“月”に、あの世の“黄泉”。それに“蓮”とかいてツクヨミレン」

 カインがメモを確かめると、ゼノについて調べるうちに「ツクヨミ」という単語がそこら中に散らばっていた。蛇男——スネイクの順番を入れ替えネイクスと呼ぼう——は、紅茶を啜ってから話を続けた。

「数年前までそこの村に住んでいたの。どんな子にも分け隔てなく接する優しい子で、あたしも話したことがあるわ。でもねぇ——」
「あの、その子って人間ですか?」
「ええ。茶色い髪で、夜みたいな黒い瞳の女の子だったわ」
「ほう……」

 カインがちらりと千破矢を見やると、視線に気付いた千破矢は少し困惑した表情を浮かべて頷いた。

「“人間は他者に魔法を見せてはいけない”という規則を知らなかった彼女は、友達の怪我を治してしまった——」

 千破矢は察した——察してしまった。その規則をそのまま受け止めるとつまりは、こういうことである。

 ——人間は人間らしく無力であれ、と。