コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: KEEP THE FAITH ( No.229 )
- 日時: 2016/06/14 23:42
- 名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: 5YqwrR3X)
ずるずると無抵抗(ただし協力もしない)なアレンを引きずり村の奥の方に到着。千破矢はぽいっとアレンを放った。黒い外套を少しだけ揺らして数歩歩いたアレンはふくれっ面を向ける。
「痛い」
「……てへぺろ?」
「そんなツッコミにくい中途半端なボケはいらない」
足で着地してる時点で痛くないだろうとか。そもそもお前は普段の環境からしてこの程度で痛いとかそんな概念ないだろうとか。そんな反応を待って呟いた言葉になんちゃってお兄ちゃんは慣れもしないボケで返してきたのである。空気読めや馬鹿野郎。
とにかくなんちゃって長男となんちゃって長女(妹)に断固として接触しようとしない感じの次男は長男とのまさかの再会に正直内心びっくりであった。罪悪感渦巻く次男の心情としてはまことにアカンである状態なのだ。
「カインの雰囲気的にとりあえずこっちまで来たけど、何か見つけたら持って来いって言ってたっけ」
「いや、何か見つけたら報告」
「マジかこんがらがってきた」
「嘘だろまだ混乱するには早いぞお前……」
うわ嘘やんとアレンはドン引きな感じの仕草をする。
ちなみに現時点で1番大混乱のパレードを繰り広げているのは千破矢くんである。それはもう名状し難い混沌を極めた脳内で。言わば思春期で夜遊び大好き息子が突然早く帰ってきてああやばい晩飯お前の作ってねえわみたいな状態。いや訳わからん。とりあえず「てへぺろ」が彼の心情を物語っているとだけ言っておこう。
なんてギクシャクした兄2人なのだろう。本当になんちゃってである。妹は昔から異性に囲まれた夢小説のような状態なのに全く動じないチート軍人姫なのに。
「……」
「……」
「……探すか、見当もつかない手がかりを」
「果てしないな」
会話が続かない。それは気まずさと共に作者の精神も削って行くわけで。ぜひやめていただきたい。
そして運命は作者の味方(を騙すには敵から)となる。
「——千破矢、ちょっと静かにして」
「俺何も言ってないッ!?!??!」
「ウザい黙れ」
「さーせん」
アレンは建物の裏へ千破矢を引き込み身を伏せて耳を澄ます。……ざっ、ざっ、と何かが音をたてて近付いてきている。音は千破矢にも聞こえたようで、音源を辿ってみようと提案。
「やるなら隠れてから、……」
指をぱちんと鳴らすと、アレンはゆっくりと立ちあがった。親指を立てて千破矢に「行け」的な指示を出す。
「殺す気か?!」
「さっさと行けよ往生際が悪いな」
「やるなら隠れてからって言ったのお前!!?」
「……あーね。そこは大丈夫。行け」
てい、と蹴りを入れて千破矢を建物の陰から追放する。長男は突然の裏切りに怒りを隠せない様子だがそれ以上にこけそうな体勢をなんとか直す。おいこらと振り返ろうとして、別の気配を察知する。
「——嘘だろ」
血のような赤黒い髪。数多の色を含んだような黒い衣服。
こちらに気付く様子のないその人物の姿は、千破矢の父のそれであった。