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Re: KEEP THE FAITH ( No.233 )
日時: 2016/07/09 20:21
名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: 5YqwrR3X)


 爆音源の方角の上空には青白い粉が舞っている。

「はやっ」
「しゃーない。あいつチートレベルで脚速いからな」

 脚力向上なんて魔法聞いたことないわ、オレ。そんなことを呟きながら狼は空を見上げている。
 フェイは不服そうな表情で同じく上空を睨みつけた。

「どうせならもっと派手にわかりやすくしろよ」

 この距離の位置から青白い粉がしっかりと確認出来るのは、狼が獣人だからである。純度100%の竜人なフェイには全く何も見えない。
 ——もっとも2人にとっての“合図”とは、カインにとってはただの武器交換にすぎない。本人としてはただ刀が邪魔だから氷族の能力を利用して消しただけなのである。

「なー、それホントにカインだよな?」
「ガキンチョ2人がそんな大層な演出出来るとは考えにくいな。多分さっきの音の時点で大ダメージ。敵だとしたら尚更行く必要がある」
「なるほど」
「そもそもあんな氷弾き飛ばすようなやつオレは2人しか知らん」

 馬鹿姫軍人と情報オタク。まさかこんな所に真白がいるわけでもあるまい。

「じゃあやっぱカインだよな」
「だな。……本気出しそうな敵って誰が居たっけ」
「この前メモ帳と睨みあいしながら呟いてた名前が1つあるだろ。確か、そう。不知火千暁」

「……」
「…………」

 しばしの沈黙の後、2人は盛大に叫ぶのであった。

「「——あかん!!」」

 我らが組長、大ピンチである。


 *


 メタ発言で言うとこの作品の第1章の黒幕と闘っている情報オタク兼組長なカイン。
 千暁が炎を纏った剣を持っているのに対し、カインは縄のついたジョウヒョウを腕に巻き付けていた。何故ジョウヒョウが片仮名かというと、ジョウは縄で良いのだが、ヒョウが環境依存文字だからである。本来ならかねへんに票なのだが。そんなことはどうでも良いのだ。ただ片仮名表記なのが作者的に解せぬというだけで。
 カインが縄の先端のヒョウを投げつけると、千暁はそれを軽々とかわし、剣に纏われていた炎の渦を振るう。

「ピュロマーネ!」

 炎の弾丸が狙った先は——すぐ後ろにいる千破矢とアレン。袖から隠していた縄を引き出し、それを握る。パキッと小さい音を立てた縄をブンと縦に叩き落とし、炎を相殺する。
 そして目の前にまで距離を詰めていた千暁の腹部をヒョウで刺す。よろめいた千暁はかすかに笑みを浮かべた。

「——シャドウ」

 先程弾き飛ばされ消滅した炎の剣——影が、またしても2人を狙う。

「ッ!」

 カインの右手を貫いたそれは再び音を立てて消えた。次の瞬間、千暁は剣をその手に突き立てる。

「形勢逆転だな」

 腹部を踏みつけながら、笑みを浮かべる男。一瞬ポカンとした表情を見せかけた少年は、くすっと笑って見せた。

「形勢逆転? 何が?」

 あんたあれくらいで形勢とか情勢とかいうレベルの闘いだと思ってたの?

「——恥ずかしくない? 無防備の2人を庇いながら闘う年下のガキと互角以下、だなんて」

 白いパーカーが、赤く染まる。