コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: KEEP THE FAITH ( No.234 )
- 日時: 2016/07/11 15:33
- 名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: 5YqwrR3X)
説明をするとなると少々面倒臭いことになるので、敢えてこう述べておこう。
——相手がカインでよかったですね。
*
2人が駆けつけた時、そこには戦場の一部を切り取ったような光景が広がっていた。
右の掌と腹部をグロテスクな色に染め上げて荒い呼吸をしているカインと、そのすぐ隣で応急処置を施す千破矢の姿。そしてうつ伏せで放置されているのアレン。辺りの建物はほぼ全てがズドンとグシャアである。
「何があった」
わかりきってはいるが。フェイが尋ねると、ゲホゲホと口から氷を吐き出したカインは掠れ切った声で答えた。
「……に、げられた」
千破矢に礼を言うと、カインは自力で傷口を塞ぐ。やっぱり真白の兄だわーと再認識したところで話は戻される。
「げほっ、挑発で、血にふれ、させるまでは……よかったんだけど」
なぁに言ってんだこいつはと3人が心の中でツッコミを入れる。そんな3人の様子を察したのか、カインは氷の粒を咳とともに吐いて、
「ぎゃくに、なに、ききたい?」
「とにかくその……たった今完治した怪我の説明を」
「あ、千破矢もあいつも怪我してるな。治してやるよ」
「狼優しい怖い」
「えっ、別にい……お願いします」
はっとアレンを見た千破矢はすっと立ち上がってアレンを抱えて戻って来た。
「く、そ、しくったな……ははっは」
「お前はお前で大丈夫か? ……精神的に」
余韻、余韻。そう言いながらにこりと笑うカインはの目はさながら鮮魚コーナーの魚のようだ。何の余韻かなんて聞かない。
とにかく千破矢は擦り傷と背中の打撲を、アレンは数カ所の火傷と一応呪いのエキスパートである狼には丸わかりの呪いを「ちゅどーん」なんて言いながら解かれる。
「やー……っと、氷消えたぁーっ!」
「おかえりカイン。精神病院行くかい?」
「至って正常だから安心してネイクスのところへ戻ろうか」
入り口で待機してくれてるから。
なんで爆音で反応してくれなかったのあいつなんてツッコミが入りそうなものだが、ツッコミ要員はひくっとこめかみを引きつらせただけだったという。
千破矢にアレンを背負わせ、ネイクスのもとへ戻る最中に話を聞いた。
まず、千暁が2人にとどめを刺そうとしていたこと。千暁は自分の言うことだけを忠実に実行する人形が欲しかった、デジェルという男が惜しかったということ。武器を変えたことに関しては説明がいらなかったため、ちょっと本気になっちゃったとだけ。炎魔法と闇魔法を使われたこと。対象は千破矢とアレンで、それを防いだら掌に大穴が空き、続けて剣を刺されたこと。炎の剣というだけあってけっこう熱かったというのは当たり前すぎて必要のない情報。形勢逆転とか言われるとは思わなくて笑ってしまったこと。ついでに挑発してみたら盛大に乗ってくれたため自分の体内を少し細工して千暁の片足を物理的に凍りつかせることには成功したこと。そのあと千暁は凍りついた部分をトカゲの尻尾の如く斬りおとし、剣で焼いて撤退したと。
「ああ、そうだ。不知火千暁、やっぱりゼノ幹部だったよ」
心からの笑顔でさらりと述べたカインに、話を聞いていた一行は絶句したという。