コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: KEEP THE FAITH ( No.235 )
- 日時: 2016/07/11 16:52
- 名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: 5YqwrR3X)
『——そう。あなたの父の部屋の、引き出しにあったから、多分、間違いない』
「わかりました。都合が良いのはどこでしょうか」
『今いる場所、ゼウス。問題ない』
「拒否権ないですね。ゼウスのどのあたりにしますか」
『3日後にゼウスの役所で』
「でっかい方ですね。わかりました。では、御機嫌よう」
詩音は深い溜め息とともに腹部を押さえたという。たまたま同室で資料を貪っていた真白は首を傾げた。
「……千破矢の真似か?」
「いえ、……彼の気持ちを察しただけです」
「感情移入? 君もしかして本読んで泣くタイプ?」
「泣きません」
「ちなみにデジェルとカインさんと兄は無言で泣くし、しばらく止まらない。母は泣かないし、父は『本如きで泣くなんて軟弱な!』って言いながらぼろぼろ泣く」
「そんなことどうでも……お母さん強いですね?」
意外というかなんかもう変な感情移入事情を聞かされ、男全員泣いてるじゃねーかというツッコミを堪え、とりあえず唯一の女性である母が泣かなかったことへコメントを残す。
「僕も泣かないー」
どやあ。そんな感じの言い方ではあったが、無表情な分こいつは泣かないというより泣けないんじゃないかと思えてくる。
「で、そんなことより。さっきの電話は?」
「リンからです。父の日記が見つかったらしいので」
「顔にいらないって書いてあるぞ」
乾いた笑みを浮かべながら詩音が扉に手を掛けた。
「出発は明日。馬車借ります」
「別に構わない。……ひとりで?」
「しばらく“当番”じゃない人って誰でしたっけ」
「あと10回分ほどは僕と豪雷と鈴芽で独占してるからな……」
「みんな暇ですね」
「ちなみに場所は?」
「ゼウス」
真白はああそれなら、と人差し指を立てた。
「どこぞのニートがゼウスに行ってみたいと言っていたぞ」
「いらん……」
*
晩飯の時間を使った議論の末、デジェルと魔王と詩音というわけわからんメンバーで決まった。豪雷は己のシフト(?)を呪ったという。
「では、行ってきます。早くて数日で帰ります。多分」
「気を付けてねーっ!!」
風蘭に見送られながら詩音は馬車に乗り込む。
——この旅が、後にゼノへ大ダメージを与えることになるなんて、誰が思っただろうか。