コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: EUREKA ( No.24 )
- 日時: 2014/12/28 07:20
- 名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: nlCdadAl)
「ねえ、ちはや。やっぱり私が……」
「大丈夫だっての。捕まっちまったもんは仕方ねぇからな」
「でも……」
「テメェか? 早く来い」
「わーったよ」
千破矢は竜人のあとを追う。
「良かったな。パートナーが良いヤツで。お前の命はもうちょい延びるぜ」
残った竜人が蓮に囁き、立ち去った。
蓮は牢屋に独り残される。
「……はあ」
腹部をさすりながら蓮は溜め息を吐いた。
あっさり竜人に捕まってしまった蓮と千破矢。一応ゼウスには来たけれども、ここから先は人身売買なんたらかんらみたいなことになっている。
「よし……。寝よう」
そして千破矢はと言うと、舞台の上で大勢の客を前に思わず吐き気に襲われていた。
「あいつなんだ?」
「飛べねぇフェニックスだとよ」
「ただの火鳥じゃないの」
「……おえ」
ただしこの建物の中にある手錠を全滅させるほどには怪力である。そして舞台へ上がる直前にも竜人に軽く一撃喰らわせるほどに凶暴だ。
『えー、これより不死鳥の——がっお前、何だ——ッ!?』
一同がざわめき出す。放送のため、マイクを握っている者が見えないため、鈍い音がマイクを通して響く。そして——
『あ、あー。マイクテスト。……さて、と。我は氷族である』
「「「!?!?」」」
ざわめきが増し、千破矢は驚愕した。
『氷兵か氷姫かは想像にお任せする。全くの別種の可能性もあるがな。さて、音を聞いたのなら察した通り、司会は我が乗っ取らせて貰ったが……』
千破矢はそっと舞台を下り、牢屋へと走り出す。そしてその間も真白による司会は続く。
『氷族は希少種だそうで。欲しければ来い。全力で逃げさせて貰うが抵抗はしない。絶好のチャンスだ。では』
瞬間、舞台含め全ての電気が落ち、辺りに静寂が響き渡った。
*
「ニベアもフェルームもよくやった」
『『どやあ!』』
「全くもう……。あの司会は色々な意味で強烈だね」
蓮たちをばっちりサーチした2体の頭を撫でながら褒める真白。そしてそれを見ながら呆れたように呟くのは蓮。
結局、宣言通りに全力で逃げ、千破矢と蓮を回収直後、2人が数日間借りている宿で、久しぶりに腰を下ろした。
「人前でそう言うのは慣れてなかったんだ」
「あたしがいたなら代われたのに」
「建物丸ごとハッキングして逃げ出すとかどこのテロだよ」
「不可抗力である……」
少しずつ声が小さくなる真白を見て、2体のロボットは抗議する。
『ありゅじ、みんなのためにがんばったんだもん!!』
『だかりゃ、ありゅじをいじめちゃ』
『『めーなの!!』』
「う、ごめんな。真白……。俺らのせいで」
「は。我が軍は謝罪を求めている訳ではない」
完全に拗ねている真白に、千破矢は少し唸り、向こうが見ていないのはお構いなしに笑顔で言った。
「ありがとな。あと、久しぶりだな!」
その時真白が微笑んだということは、ロボット2体すらも知らない——。