コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: KEEP THE FAITH ( No.240 )
- 日時: 2016/08/30 20:38
- 名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: 5YqwrR3X)
「やばい今更ながら緊張して来た」
「遅いですね。状況がいまいちわかりません」
「あれだよ、誘拐」
「アルマさんみたいな可愛らしい少女ならまだしも、俺みたいな不良もどきと老人顔負けの年齢のわりに童顔の魔王を誘拐するあたり意外と本当に従業員に食われるんじゃ……」
「わざとかよそれわざとかよッ?!」
色んな意味で。
「とにかく状況を整理しましょう。はい、どうぞ」
「オレっ?!」
「俺は覚えてません。アルマさんは起きません。どうぞ」
「君の中にオレが覚えてない可能性はないの!?」
「だって魔王だから」
「それ偏見! 偏見だから!!」
「で、覚えていますよね?」
「ねえそれ凄い威圧だよね。覚えてるけど。教えるから、ね?」
たかが10代の男子に劣勢な魔王。
まわりを一旦見渡してから、アステルは少し声の音量を下げて話し始めた。
「さっき、祭りに行っただろ。あの帰りに……」
「気配もなく?」
「気配もなく」
「青つなぎこわっ」
「そっちかぁー」
始まりも終わりも知らない謎のコントが繰り広げられるなか、部屋に奇妙な音が響いた。
音の方へ視線を向けると、——青いつなぎ()の男が1人。デジェルの隣でアステルが空気を読まずに「あいつらマジ作業員みたい」とぼやく。
「気分はどうだ?」
「空気がまずい」
ひとコマに纏めると「スパーン」と効果音が付きそうなほどにきっぱりと言い放ったのはデジェル。男もこれには呆然とするしかない。何せ男にとってこれはデジェルとの初コンタクトである。
なんだよ空気がまずいって。悪かったな。と。
「き、聞いて驚け! 我らがゼノの目的を教えてやろう!」
人差し指をデジェルとアステルの間の空間に向け、男はポーズを決める。
「それは、ゼノの元幹部の息子、西園寺詩音を始末すること!! そしてもう一つはッ魔王・イザヨイヒナタと何か知らんけどツクヨミレンも始末することだ!!! お前らはいわば人質だあ!!!」
沈黙。
もはや始末しか目的にないうえに、盛大に勘違いをしている。あえて口には出さずにデジェルとアステルは考え込む。
「声も出ないか!!」
「声は出る」
「そうですかこの野郎ッ!!」
ガッチャンと錆びれた扉を勢いよく閉め、男が視界から消える。
「何しに来たんだあいつ」
「目的を教えて震え上がらせるため的な」
「ツクヨミなんとかと魔王(笑)はグラギエスにいるから問題ないですね。真白様がいますし」
「あの子はヤバいわ、頭の中がお花畑のまま敵陣に突っ込むイメージしかない。そして無傷と返り血で帰還」
「それこそ偏見ですね。で、問題は詩音ですけど」
「戦闘要員としてはあまり働かないからなぁ。前に1回やらかしたせいで」
「あぁ、そう言えばそんなこともありましたね。正直抉れた石畳にしか目が行きませんでした」
「ノーコメント」