コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: KEEP THE FAITH ( No.242 )
- 日時: 2016/09/22 15:00
- 名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: 5YqwrR3X)
「まったく、久々に探知なんてしますよ」
ベッドに本を放り、詩音は指を鳴らす。
楽しい祭りの後に何があったというのだろう。魔王か、魔王なのか。馬鹿なの? 等々、盛大に八つ当たりの罵倒をしながら今まで手を覆っていた手套を脱す。
——発見。
「……郊外じゃないですかやだー」
アルマの言葉を思い出し、部屋で独り文句をこぼす。まさにあの塔だ。わかりきってはいた。風貌が既に怪しかったし、鈴芽が青いつなぎを下僕にしたという話は既に聞いていた。
手袋を床に叩きつけ、とても元領主の息子とは思えない舌打ちを決めてから詩音は宿をあとにした。
*
街はまだ祭りだの花火だので賑やかだ。老若男女様々な種族が行き来する道を下に、詩音は思考する。
シルアがアステルらが大変だと伝えてくれたのは良いが、何故それを察知できたか。それはもう、見当もつかないため放置。強いて挙げるなら「シルアだから」だ。今までもそのようなことがあったためもはやどうでも良い話である。
彼が考えていたこと。それは——「ゼノ(断定)は撲滅」である。
「えぇっと、ああ、あれですね」
遊び半分に旋回しながら目的の塔の前に着地する。
塔に出入り口のようなものはない。探せば隠し扉的なものは見つかるだろうが、残念ながら撲滅を始めとした物騒な言葉で頭を埋めているキチガイにとって扉の有無など小さな問題である。
「お邪魔しまーす!!」
「「「ぅえええええええええええ!??!」」」
石製の建物を蹴破りダイナミック入場。内側にいたやつらにとっては吃驚仰天なんてそんな可愛らしい言葉では説明できない恐怖に駆られたことだろう。
——“元幹部、西園寺の息子”という情報しか知らないゼノのなかに、高らかに「お邪魔します」なんて叫んで分厚い壁の一部を蹴り飛ばした野郎が目的の西園寺詩音だなんて想像できた人物は1人でもいただろうか。
「む、おかしいですね。これで最低5人は潰す予定だったのですが」
現在被害者0人。
「……まあいいか。どうせ殺人は無理だし。あ、シルア出ます?」
瓦礫の上でひとり、口元に指を当て、くすくす笑いながら嘲るようにこれから否応無しに参加させられるギャラリーを見下ろす赤紫の双眼。
吸血鬼様による生き地獄の幕開けである。