コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: KEEP THE FAITH ( No.244 )
- 日時: 2016/09/22 18:48
- 名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: 5YqwrR3X)
「47」
ぽつり、小さく呟く。声は下卑た笑いに掻き消された。
「よォ氷兵さん! 庇ったは良いがお前がやられてんじゃ意味ねェだろうがよォ!!」
「やめてよ!! デジェルさんは悪いことしてないでしょ!!?」
「はァ? 悪いことォ? お前、なんも知らねェんだな?」
「は?! 何が!」
3人のうち1人がデジェルの胸倉を掴んで壁に押し付けているのが見えた。既に不快でしかない。もう1人がアステルと、ぎゃんぎゃんと抗議するアルマの腕を捕らえているのが見える。あと1人が——現在詩音の足元に転がっている。
「おい氷兵クン? 何か言ってやったらどうだァ?」
「……」
「チッ、だんまりかよ! つまんねェやつだな!! じゃあ教えてやるよ!!!」
にぃんまりと口角を歪めると、デジェルを押さえている男は高らかに叫んだ。
「こいつは魔王軍のイヌだ!!! ——もう、何人もこいつに殺されてるんじゃねェか?」
「ッそれは——」
言葉を遮るようにデジェルの首を絞める。
「——確実にないですね」
直後、ビー玉程度の大きさの黒い玉が男の頭部に命中する。床に着地しながら咳きこむデジェルを一瞥し、詩音は銃のような形の黒い影を下ろした。
今まで2人を捕まえてニヤニヤと笑みを浮かべていた男は一瞬で顔面蒼白。奇声を発しながら詩音へ突っ込んでくるものの、デジェルが投げたガラクタに躓いてスライディング。不謹慎だが凄まじくダサかったというのは魔王様の閑話休題。
「はい残念」
「お、まえ! 何者だ!?」
「貴方方のお目当て、西園寺詩音です。父がお世話になられたようで?」
終始営業スマイルを張り付けている詩音には誰もが恐怖したことだろう。語尾とともに極端に首を傾げることでそれはもう尋常じゃない程に凄まじいことになっていた。
「デジェルは殺人なんてしてませんよ。その点ではむしろ私の方が危険人物でしょうね。親殺しですし」
親殺し。そう言いながら表情だけを変える。凍り付くような無表情。
「消えろよ、ゼノのイヌ」
*
「3人ともお疲れ様です。大丈夫でしたか?」
「オレは迂闊に手を出せないから、少し物足りなかったというか、自分の無力さを痛感したというか」
「自分の弱さを改めて感じさせられたな。もう少し早めに気付けたら良かったな、と」
「デジェルさんって魔王軍だったんだね!? ってなったかなぁ。シオンさんの登場と帰り道で誰も死んでなかったところにビビった」
「ふふ。殺傷は苦手ですからね」
ぼそりと「邪魔者は潰しますけど」と呟いたのを聞き逃さなかったアルマは一言。
「君は変わってしまったんだね」
夜空に打ち上げられた花火を見上げるのであった。
49人生還。報告書には、「西園寺息子マジパネェ」とだけ書かれていたとか。
——西園寺の息子は危険だ。絶対近付くな。
そんな噂がゼノの中で広まったことを詩音本人は知らない。