コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: KEEP THE FAITH ( No.260 )
- 日時: 2017/02/10 13:28
- 名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: 5YqwrR3X)
結界とは——。
オブ・ルクスと別世界の干渉を封じる者。ヒトとして生まれ、本人もそれに気付かぬまま一生を終える。機能もヒトと同じく。種族に関係なく高い魔力を保持する。
害はないが感情が昂ると実質制御不可能となる。
——続きは虫食いで読めない。
蜘蛛の巣と埃と名状しがたい物体が転がる薄暗い書斎にて、ランタン片手に埃を被った厚い本を積み上げていく少女の姿があった。
彼女がこの部屋へ来て数時間が経過している。空は闇色に染まっているだろうが、地下にいる真白にそれは関係ない。
背後でかたんと音がした。ゆっくり振り向くと、視界の端に小さな黒い封筒が見える。
拾い上げると、その紙には一言。
埃まみれの部屋の中に、汚れひとつ付いていない黒い紙は酷く目立つ。
「……持って帰るか」
分厚い本を数冊と、その上に封筒を乗せる。埃と結託したような部屋を背に、真白は城への帰路を急いだ。
*
「ましろん遅いね」
「何かあったら呼べって言われてるけど、ご飯出来たよーって呼ぶのはなんか違うよねぇ」
「むしろご飯出来たよって呼べってことでは? 用件なんてそれくらいだと思いますけど」
「呼んでみる?」
「呼んでくるものなのか……?」
リクエスト通りのカレーが並ぶ食卓では真白を待つ面子が議論もどきをしていた。と言っても全員手にはしっかりとスプーンが握られているのだが。
フラムの言葉に日向が便乗し豪雷が首を傾げたが、鈴芽はスプーンを置いて服のポケットから小型マイクを取り出した。扉の方へ向き、すぅ、と息を吸って——
「——まあああああああっしろおおおおおおおおん」
叫んだ。
「……ただいま?」
扉が押し開けられ、全員固まる。
「……おかえりなさい!」
唯一スプーンを落とさなかったフラムが真白にサムズアップで応える。同時に崩れ落ちるように笑いだしたのは鈴芽。他はマジか来たぞとぼそぼそ。
真白は少し不快な表情を浮かべながらもただいまと答え、運んでいるうちに埃が落ちた本を床に置く。
「いきなり扉越しに呼ばれて少し驚いた」
「ごめんごめん。ご飯出来たけど帰って来ないから呼んでみたら、ホントに来たから」
「ああ、なるほど。待たせてすまない。珍しく本に囲まれて興奮していた」
「本に囲まれて興奮ってエグいですね」
「まあ目的のものは手に入れたし、予期せぬ収穫も得られたから——ご飯食べても良いですか」
日向が全速力で厨房へ走って行った。