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Re: EUREKA ( No.33 )
日時: 2015/01/17 03:34
名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: nlCdadAl)


「あぁ、そう言えばさ、知ってる? ヒョウキの体」

 少年は手に持っている針を真白に見せる。

「さーて、ボクはこれから、何をするでしょーか? ふふっ♪」
「……っ」

 黒く笑う少年。真白の瞳には、疑問と恐怖がにじみ出ていた。
 ——氷姫とは、氷兵をまとめる“王”であり、“神”であり、“希望”である。氷姫が消失することにより、氷兵の存在も危険にさらされる。故に氷姫は氷属性以外の魔法も習得する必要がある。
 真白は先ほどの慣れない魔法に続き、奇襲を仕掛けられ、体力、神経、思考、全てに対するエーテル含め精神を削られていた。

「——!」
「えっ、——痛ッ」

 針を持っている指に噛みつき、少し動揺する少年。思わず持っていた針を地面に落とし、指は徐々に凍り始めている。

「……あー、そう言えば、そうだったね。ヒョウキって、そんな器用なこともできたっけ……。兄さん」
「——リヒト。少し、調子に乗り過ぎだろう」

 呆れたように呟きながら、月光に照らされた少年——リヒトの影から、リヒトに酷似した少年が姿を現す。

「驚かせてしまってすまない。私はコイツの怪我を治療しに来ただけだ」
「いやいや、兄さん。そこに驚いてるわけじゃないと思うよ?」

 ——“探知”を忘れていた訳ではない。捕まってからも、常に周囲をうかがい、生体反応を探知して、逃げ場を探していた。
 何故、と疑問を表情にうつす真白に、リヒトはとても良い笑顔で答える。

「兄さんはね、ボクの影なんだ。ボクが表で生活し、シャッテル兄さんが裏で暗躍する。どう? わかったかな?」

 治療してもらいながら笑顔で説明してくるリヒトはさらに続ける。

「さてさて、ここで問題です! ボクと兄さんにヒョウキ・ヒョウヘイの違いを教えてくれたのは誰でしょーか?」

 思えば、何故“氷姫”と“氷兵”の違いを、体を知っているのか。
 真白の中で、1つの疑問が解けた。

「ぶぶーっ、時間切れ♪ 罰ゲームと同時に、答えを教えちゃいまーす♪ 兄さん、良い?」
「……良いだろう」

 シャッテルはそう呟いてからリヒトの影と一体化する。リヒトは人差し指を口元に添え、

「答えは、デジェル・ミストラル」
「え……?」
「ふふっ、ビックリした? そう、君の幼馴染みで、初めてのお友だち。デジェル君♪ ここであらためて聞くよ。
 ——ねぇ、今、どんな気持ち?」

 真白の中に広がる感情——“絶望”。どうあがいても消えない“それ”は、じわじわと、着実に、真白をむさぼり始める。

「じゃあ、罰ゲームね」

 喉元から上へと、縦に薄く斬り込みが入る。

「……面白くないの」

 つまらなさそうな顔をするリヒト。
 助けて。そう泣き叫ぶ自分を押さえこむように、真白は気を失う。

「——翡翠刀奥義・露時雨」

 遠いような、近いような。懐かしい声を聞きながら——。