コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: EUREKA ( No.34 )
- 日時: 2015/01/17 04:21
- 名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: nlCdadAl)
——大丈夫? 怪我は……しちゃったよね、ごめん。
——俺は良いよ。君が成長してくれたら嬉しいな。
——じゃあ、また会える日まで。さようなら。
目を開くと、さっきより低い位置から見た植物たち。
さっきと違うことは、体が縛られていないこと。目の前にリヒトがいないこと。首が——以上に痛い。
「ぅ……」
「あっ、起きたんだ……」
首元を押さえながら声の方向を見る。そこには、白いパーカーを深く被り、その上に真っ白なマフラーを巻いた、露草色の瞳の少年が笑いかけて来た。
「真白ちゃん、大丈夫? 怪我、しちゃったよね。大事なところなのに……。ごめん、じゃあすまないよね」
「ぁ……、カイン、さん……?」
「……え、覚えてて……、くれたの?」
痛い。話したい。辛い。
真白は言葉の代わりに、カインを抱きしめる。
「うあっ、と……。久しぶりだね、真白。覚えていてくれるなんて嬉しいな。喉の痛み、取るよ?」
カインの言葉に、真白はこくりと頷いた。
*
「にしても、強くなったね」
「強くない、よ。さっきなんて、一方的に相手に攻撃受けて、気絶して……」
「ははは。でも、力だけが強さじゃないよ? 心の強さも大切。よく耐えたね」
「……うん」
巨木の根元に座り、完全に甘えモードの真白。
約五年前、自分を助けてくれた少年——カイン・クロウド。カインは竜人で水属性だが、他とは違い攻撃をして来ない。そんな彼のことを、真白は心から慕っていた。
「魔王を倒す、か……。実は俺、魔王情報集めてるんだ」
「……魔王情報?」
「うん。魔王の住処とか、技とか、弱点。そんな情報を、各地を回って集めているんだ」
「その情報、欲しい」
「良いけど……。急いじゃ駄目だよ?」
「もちろん。それをするのは蓮だ」
頬を膨らませる真白にカインは頬笑み、自分のマフラーをはずして真白に巻く。
「俺の力じゃその傷まで治すことはできないから、それあげるよ」
「ん、ありがとう」
「んで、魔王情報だよね。えっと——」
カインはパーカーのジーンズのポケットからメモ帳を取り出し、文章を読み上げる。
「魔王はシュヴァにいる。魔法はまだわからないけど、色々使えるらしいよ。弱点はわからない。見た目はどうやら、二十歳くらいの男性らしいね」
「……覚えた。ありがとう、大事な情報を」
「ううん、情報を売る仕事だからね。お代は今までのお話で充分だよ」
カインは空を見上げ、
「もうすぐ夜が明けるね。そろそろ仲間の所へ戻る?」
少し名残惜しそうに笑う。
「うん。えと、楽しかった。ありがとう。また、会えるかな……」
「もちろんだよ! 新しい情報待っててね!」
「うんっ。じゃあ、また会える日まで」
「元気でね!」
カインはそう言うと、背中から竜の翼を生やして立ち去った。真白はカインを見送ってから洞窟へと戻る。
少しだけにやけてしまっている表情を隠すため、マフラーを少し持ちあげた。