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　見渡す限り砂でおおわれた砂漠を荷車が通る。
　蓮は真白が収穫して一時的に異空間に放り込まれた食べ物を救出しながら真白を見る。
　今朝から荷台の端に座って全く動かない真白に、蓮を含め全員が心配し始めていた。

「シオン、何か知らないの？」
「そうですね……。あ、町があります」
「あ、ホントだ！」

　堂々と話を逸らす詩音と、あっさりと騙されてしまう蓮。
　一方真白は脳内整理をしていた。
　——魔王情報。デジェルの裏切り。首の怪我。氷姫。
　——自分の正体と魔王の居場所に関する情報は話さない方が良い。氷姫の弱点に付いてしまった傷は、今のところ支障はないためマフラーで問題ない。
　——デジェルに関する情報。それに加え、ＫＨ——研究施設——、アレン。
　謎が多過ぎる。

「——ましろんっ」

　突如声を掛けられ、真白はビクリと顔を上げる。——風蘭は、ニベアとフェルームを両手に抱えて心配そうな顔をしていた。

「風蘭？」
「あのねっ、ましろんから、暗い風が吹いてたの……」
「そう……なのか！？」
「ふうに聞くの！？」
『ありゅじがこわれたぁーっ』
『たいへんだぁ！』

　ちなみに男子軍——千破矢は「目が覚めたら真白が豪雷になってた」ということでダウン。豪雷は「俺でも同じ姿勢のまま三時間は無理」発言。詩音はなんとなく察しているが敢えて黙りこみ、日向は半分諦めている。
　そんなしっちゃかめっちゃかな荷台を見ながら鈴芽が一言。

「——シオン、その道を右に曲がったら風蘭の羽むしりとるからね★」
「「えぇ！？」」

　脅迫と言う名の指示を出す鈴芽の目は笑っていない。詩音は素早く進行方向を替え、荷車が思い切り揺れる。こうして風蘭の羽は救われたが——

「なっ何だ！？」
「……えっ？」

　真白が勢い良く立ち上がり、壁際で蹲っていた千破矢が驚愕する。

「……俺？」
「——エラー発生我が軍は現実逃避を開始するぅぅぅ！！！」

　真白が千破矢を指差して呟くとともに、千破矢が全てを察して現実逃避。
　その状況に、風蘭は既視感を覚える。

「も、もしかして——」

　風蘭は両手からニベアとフェルームを解放すると、２人を見比べてから言った。

「——入れ替わっちゃった……？」