コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: EUREKA ( No.4 )
- 日時: 2014/12/14 19:54
- 名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: nlCdadAl)
その頃、「魔物の巣窟」と言われた森では、色々と想定外なことが起こっていた。
「っ……、次から次へと出て来るぞ。どうなっているんだ?」
「そうですね。まあ、化け物の縄張りにでも入り込んでしまったのでしょう」
三つ目の獣を叩きのめしながら溜め息を吐く豪雷と、木の上でその様子を見ながら返事をする詩音。
「——というか」
「?」
「あの鳥と妖精どこ行ったんですか!? 私を脳筋と2人きりにするなんて根性ありますね、あとで覚悟しろ! でございます!!」
詩音は悪態をつきながらふわりと地面へ降り立ち、戦闘に加わる。
ちなみに、あの鳥(鈴芽)と妖精(風蘭)はそのすぐ近くで見ていた。
「んー、近付かないわね……」
「え? ふう、よくわからないよ?」
「ふうらんは健全だねー。ほんと、食べちゃいたいよー」
「……ふぇ? ふうを食べるの!?」
腐女子と健全の会話はそう続かなかったという(主に魔族の存在によって)。
そして、豪雷の持っていた木刀も限界を迎える——
「——っ」
獣が豪雷の首元へ飛びつく。
『みっんなー!げんきぃーっ?』
次の瞬間聞こえたのは、鈍い音でもなく、獣の呻き声でもない——かわいらしい少女の声だった。
声の聞こえた方向——草むらへと視線が集まる。
綺麗な長い金髪をツインテールにした、レモン色の瞳の少女——百目鬼鈴芽の持つスタンドマイクにより、その声は反響し、周囲の獣の動きをとめる。無論、豪雷に飛び掛かろうとしていた獣も例外ではない。
鈴芽は豪雷の目の前に来ると、獣を一体、マイクで殴り飛ばした。辺りに鈍い音が響き渡る。
「……まったくもう。やっぱりあたしがいないと駄目だよねぇー」
「いや、お前がもっと早く来ていれば、そもそもこんな事態には……」
「言い訳とは武士らしくないなぁ」
「ぐぅ……」
倒された獣を見据え、豪雷は「すまない」と呟いた。
その2人をよそに風蘭は、詩音のもとへ駆け寄る。
「じゃあ、えーっと。そう、ベーラ村に行こうか!」
「そうだな。そうとう時間を取られたからな……」
その時、背後から物音がした。
「うあー。完全に迷子じゃねぇか」
「ごめんってー! まあ、すずめの声が聞こえて助かったし、良いじゃない」
草むらから顔や足を土で汚した蓮と千破矢が出てくる。
「お、大丈夫か?」
長い髪を揺らしながらこちらに話しかける千破矢に、豪雷は本日二度目の溜め息を吐きながら言う。
「問題ない。行こう」
その時彼らは気付かなかった。
森の外——ベーラ村が、濃い緋色に炎上していることに——。