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Re: 【アンケート】EUREKA【実施中です】 ( No.52 )
日時: 2015/01/31 01:21
名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: nlCdadAl)


「あっ、あの人だ……!?」
「これはまた……」
「なるほど、やはりそうでしたか」

 詩音はそう呟くと、地面に着地してアルマをおろす。
 3人の視線の先には、砂漠に立ちつくすアルマの証言通りの風貌の青年と、——その周りに群がるトイフェルたち。
 一体のトイフェルが3人に気付き——、

「——なんだ、お前ら」
「トイフェルって喋るんですね?」

 そこかよ、という突っ込みをする者は今現在どこにもいない。
 ——そして、そんなことはお構いなしに戦闘タイムは始まるのである。

「では、先にコイツらを潰そうではないか」
「豪雷連れて来て正解でしたね……。エーアト・ボーデン」

 詩音を中心に、砂漠が徐々に固まって行く。
 そして真っ黒な笑みとともに詩音は左手を振り上げ、豪雷は鞘から刀を引き抜く。アルマは半泣きで青年を見つめ、青年はというと群れから抜け出すタイミングを見計らっている。

「ふむ、まず地形を……」
「ごちゃごちゃ言ってると潰しますよ?」
「お前……」

 豪雷は自分の足元が固まるのを確認した直後に跳躍——その際一番自分たちに近いトイフェルの脳天をぶっ刺し、青年の逃げ道をつくってから群れのど真ん中に着地。青年が頭を下げ、詩音の方へ走り出す。
 刀——雷獣刀を高く掲げ、苦手な“呪文”を紡ぐ。

「——天より轟く雷よ、眩しき閃光とともに振り下ろさん!」

 瞬間、詩音はアルマを青年に向かって放り投げ、人差し指を上に上げる。2人の周りを影が囲い、天井以外を塞ぐ。そして詩音は地面を蹴り上げ、その場を勢い良く去る。
 次の瞬間、雷獣刀をとおして閃光がトイフェルを斬り裂く。一体だけ残して——。

「っ……」

 刀を鞘に入れ、豪雷はその場に立ちつくす。
 逃げ切った喋るトイフェルが豪雷へ足を動かそうとしたその時——、その体が動きを止める。

「——ッ」
「レーメン。——麻痺技でございます」

 自身の喉に、研ぎ澄まされた爪が当たる。背後を取られ、トイフェルは思考も硬直した。

「私、本当にこういうの苦手なんですよ……。喋れるんだったら、魔王について話して下さいません? って、もう無理ですか」

 詩音は“それ”を突き刺すと、元の長さに戻す。トイフェルが地面へ倒れ、灰となる寸前に振り返り、悲しそうな笑みを浮かべる。

「——私は、大切な人を追い込まれるのが大嫌いなんですよ」

 地帯が徐々に砂漠地帯へと戻り、2人をかくまっていた影が薄れて行く。
 どさり、と。砂の上に何かが倒れるような音が、その場に響いた。