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Re: 【アンケート】EUREKA【実施中です】 ( No.68 )
日時: 2015/02/16 22:46
名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: nlCdadAl)


「——おい、起きろ!」

 薄暗い牢獄のような密室で、鈴芽の肩をガックンガックンと勢い良く揺らすのは、言うまでもなく豪雷。

「うぅ……おえぇ、お、おはよう……?」
「起きたか……」

 豪雷が肩から手を離すと、鈴芽は吐き気を押さえながらその場を見渡す。石造りの部屋で、2人はその床に座り込んでいる。腕には手錠のような物があるが、粉砕されている。

「先ほど下から爆音が聞こえて来たんだが、ここはどこか、わかるか?」
「うーん……。多分だけど、昔ポートが話してた牢獄じゃないかな」
「牢獄? ……ポート、と言うのは?」
「あたしのお世話をしてくれた、あたしの知る限りでは唯一のmanだね。本当はポートグリフって言うんだけども」

 man(男性)という言葉にピクリと反応する豪雷であったが、そんなことより、と立ち上がる。

「俺の刀がないんだ」
「ふぁっ?」
「刀がない。つまり、俺はマーシャルアーツを繰り出すしか……ッ」
「ごめん、そこでyouの口から“マーシャルアーツ”が出るとは思わなかった」

 せめて武術とか武道とかさ。と思う鈴芽を余所に、両手をグーパーと動かしながらおろおろしている。銃刀法云々がこの世界に追加されたらどうするつもりかなど聞いてはならない。
 とにかく結論から言うと、豪雷は精神不安定。頼れるのは鈴芽の知識と行動である。

「あああああ、どうしよう。えっどうしよう。スヤる?」

※スヤるとは、スヤァという顔文字。つまり、眠る。
※悲報、鈴芽も発狂寸前。
※極論、もうこのペア駄目だ。


 *


 救出メンバーの中で一番進んでいる2人は、意外にも千破矢と日向ではなく真白と詩音だった。1人は戦力外でもう1人は強行突破(キック)で押し切ろうとするペアと、喋りながらも敵が出たら適切に処理するペア。ある種正反対である。
 話を話し終えた真白は一息吐くと、何かを企んだような表情で詩音を見る。

「見るか? 首の傷」
「……ええ、是非」
「相変わらず趣味が悪いな。断る。……」

 真白が突然立ち止まり、詩音はその一歩先で足を止め、少し先の角を睨みつけた。

「……どちら様で?」

 すると、岩で作られた真っ暗な視界からでもわかる真っ白な白衣を纏った眼鏡をかけた青年がよろよろと姿を現す。壁に手をついて、こちらへ歩いて来る。

「あなた方は……、鈴芽の、友だちです……か?」
「鈴芽を知っているのか?」
「……」

 真白の質問に答える間もなく、青年はその場に倒れ込んだ。

「豪雷と鈴芽の情報を吐きださせますか」
「せめてその前に手当だけでもする時間をくれ。話はそれからだ」
「えーっ」

 鬼畜な紳士と神仏な軍人。
 結果的に、あとで自分の首を見せるということで詩音を言いくるめたのであった。


*基本的にこの小説は、(作者の趣味で)クトゥルフ的なノリです。ダイス振ってたりと。その結果が今回の冒頭(豪雷と鈴芽が使えない現実)に辿り着いた訳です。青年さんもダイス次第では無傷でした。なんて不運っぷりェ……。