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Re: EUREKA ( No.78 )
日時: 2015/03/02 22:26
名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: nlCdadAl)

*番外編

 +ジンセイアストラル+


 信仰とか、信頼とか、信実とか。“信じる”って何か、わからなくなる。
 人間の人生なんて、星の光が届くまでの間に終わるもの。私はそれが辛くて、怖かった。
 そもそも神って何?
 別に私をここに閉じ込めなくても、神様がいるなら、それを信仰したら良いでしょう?
 誰も来ない山奥の、小さな小屋に独り、今までずっと、たった独りで生きて来た。もう、良いじゃない。私を、自由にさせてよ。

 小屋の扉をドン、と叩く。
 それは小さい頃から手が痛くなるほどに続けた行動だった。

 物心ついた頃、私はここに入れられた。
 ——逆らった。あらがった。
 目の前で、大切な家族を、友だちを、失った。
 私には、人間にはない能力が生まれつき備わっていた。他の種族が持っている能力を、札として具現化する能力。
 お母さんも持っていたから、気にしなかった。
 でも、ある日友だちが怪我をして、その時に能力を使った。
 怪我が治った。友だちは喜んでくれた。
 次の日、友だちは私に向かって言った。

「気持ち悪い」

って。
 その時初めて知った。「この能力は、人に見せちゃダメなんだ」と。
 でも、手遅れだった。
 ——私はこの小屋に入れられた。
 お母さんは“化け物を生んだ女”として、目の前で息絶えた。
 今でも鮮明に覚えている。

 コンコン。
 意識が現実に引き戻される。
 向こうから、何かがノックしている。

「誰か、いるんですか?」

 男の子の声だった。

「……誰?」

 驚いて、声が裏返った。

「僕は、十六夜日向。君は?」
「私は……」

 昔の私を知っている人だったら?

「出雲蓮」

 ——出雲、蓮。私の名前。これが私の名前。

「今、外雨降ってるんだ。聞こえる?」
「ああ、うん。今気付いた」
「ここ、開けれない?」
「内側からじゃ、開けれないんだ……。あ、外からだったら行けるかも?」

 知らない。だって、開けようとしてくれる人なんていないもの。

「じゃあ、開けてみるね」
「……待って」
「え?」
「入るんだったら、オサイセンにお金入れて」
「……えぇっ。ちょっと待ってお金……、なんだと……!?」

 外で何やら独りごとを呟き続けている男の子。

「どうかしたの?」
「いや、お金入ってたからビックリしてさ。入れたよ」

 入れたよ。その言葉が聞こえた瞬間だった。
 私を外の世界から遮断していた壁が横に動いた。
 緑。翠。碧。上から透明な雫が落ちて来て、地面に波紋をつくっていた。
 そして目の前に、自然ではないもの——者がいた。
 上半身は真っ黒で、濡れたのだろう。髪の毛の先から雫が滴り落ちている。そして、いつか見たあの青空の色をした瞳と目があった。

「はじめまして、だよね?」
「……はじめまして」

 それが、私——出雲蓮——と、十六夜日向の出会いだった。