コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: EUREKA ( No.81 )
- 日時: 2015/03/04 21:00
- 名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: nlCdadAl)
「いや、なんで真白指名したんだ」
「あたしの方が弱いのに……。馬鹿だね」
「秀才で戦闘要員ってよ、あいつ作者にとことん愛されてるよな」
「実際そうだもの」
千破矢と鈴芽が漫才をしているが、目の前は戦闘モードである。
「どうしますか? 降参しますか?」
「しませんー」
現在真白は劣勢。武器を持っていない、相手は2人、という状況だからだろう。というのも、向こうは音で攻撃してくるわけで——。
「では、こうしましょう。あの赤い方以外、助けて差し上げます。そうすれば、あなたも鈴芽も、他の方々も助けられますよ?」
その言葉に千破矢は「え?」と自分を指差した。相手の女性は不敵な笑みを浮かべている。が——
——それが鍵だった。
真白はその言葉を聞いた途端に動きが止まり——次に見たのは、無言で中指を手前へ出している姿だった。
「キュール・グレンツェ。——良かったな、先にルール決めといて」
「——え」
右手の指を中心に氷の粒が舞い、“柄”が出来あがる。真白が手を開き、それが手に収まる。すると、冷風とともに柄の上に出現したのは——氷を纏った巨大な斧。
「……ぇぃ」
自身よりも充分に大きい“それ”を真白は勢い良く振り下ろす。地面に刺さった斧は地面を凍てつかせ——対象の2人を氷結させた。
真白がその斧に触れると、斧は青白い光を放ち、あとかたもなく消え失せた。
「決着。気絶以前の問題。戦闘不能。これで良いだろう?」
コートの汚れをはらいながらそう言う真白の目は笑っていない。
老婆は低く鈍い唸り声を上げ、
「そんなの、真実が許すわけがない……。この世界に真実は……魔王様だけ……まお……さ——」
「——あら? 私は一体……!? 何があったの!?」
老婆がその場に倒れると同時に、その隣にいた女性は氷の塊——氷漬けにされた2人——を見て悲鳴を上げた。
*
「——と、まあ。つまりそういうわけだ。ゴメンナサイ」
「いえいえ、あなたが謝ることではありません。こちらこそご迷惑を……」
コギク村のとある家で、その会話はあった。
その後色々あって、(結論を言うと)洗脳が解けたためとりあえず村で事情説明。
詩音は隣の部屋で治療。少し時間がかかるらしい。風蘭も隣でお昼寝タイム。豪雷と鈴芽はポートグリフとの再会からの、散歩。日向は料理やら何やらの手伝いをしていて、蓮は家の中を探索。千破矢は念のため真白の隣でスタンバイ。
「そう言えば、お婆様? って人はどうなったんだ?」
「お婆様は……牢屋送りです」
「「わあ」」
「鈴芽様はそもそも、“バンシーと歌姫を束ねる存在”で、村長と言っても過言ではない——神と崇められる存在です。そうなったのは鈴芽様のお母様の娘だからです。ですが、お婆様は鈴芽様のお母様を殺害し、自分を“束ねる者”となりました」
「おば……ん? 鈴芽が、おかあさ……?」
「大丈夫か千破矢。落ち着け。ひっひっふー」
「やめろ俺は妊娠してないというかしない」
漫才を始める2人に、女性はくすりと笑った。
「では、そろそろ治療も終わるころでしょう。今日は泊まって、明日出発して下さい。
——あなたたちに幸あらんことを」