コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: EUREKA ( No.82 )
- 日時: 2015/03/06 22:37
- 名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: nlCdadAl)
*番外編
+サイアイドゥーム+
初めてお母さんをお母さんと認識した頃、お父さんはもういなかった。
お母さんが「風」と「花」が好きで、ふうには「風蘭」って言う名前をくれた。
友だちはたくさんいたけれど、何人かは外に出て、いなくなっちゃった。その後は会ってないけど、お母さんに聞いたら「村の外に出たら駄目だ」って怒られた。
いつもお気に入りの赤いリボン(紐?)で髪の毛をお母さんに結んでもらって、友達と遊びに行くのが日常だった。
ある日、村が凄く騒いでて、何だろうと思った。
家から出て、皆が集まってるところに飛んで行ってみる。
「どうしたの?」
「風蘭ちゃん……。もう帰った方が良いわ。あとはお母さんが説明してくれるから」
「ふぇ?」
そう言ってお姉さんは飛んで行った。
とりあえず家に帰ってみると、お母さんが驚いたような顔をした。
「風蘭、どこへ行ってたの?」
「今日はお外で声がたくさん聞こえたから、行ってみたの。そしたらね、家に帰りなさいって言われたの……」
今まであったことを伝えると、お母さんはどこか悲しそうに笑った。
「……悪い人たちがが来ているらしいの。だから、これからは家の外に出るのも駄目よ」
「ふぇ?」
「外に出たら駄目。わかった?」
「うん、わかった!」
お母さんが頭を撫でてくれた。
次の日から、家を出ないで過ごした。
*
朝起きると、前以上に騒がしかった。
赤いリボンを持ってから窓を開けると、お母さんが走って来てふうを抱えて窓から飛び出した。
そして、村を出てから——
「風蘭。逃げなさい」
「……え?」
後ろから変な感じの風が吹いて振り向くと、お母さんはいなかった。でも、真っ黒な影みたいなのがいた。
「こいつもか?」
「そのようだ。回収するか……」
その影が何かはわからなかったけれど、その影から吹く風で、危険なものだっていうのはわかった。
体が動かなかった。
このまま、“回収”されちゃうのかな。そう思った時。
「えっと、ここが風月村です……か……」
「何だテメェ?」
「見たところ吸血鬼、ってとこか?」
綺麗な紫色のセミショート(?)の男の人が、大きな紙を両手に持って、それを見ながら空からおりて来た。
影はその人に向かって走り出した。
声が出ない。座り込んで、そっちを見ていた。
「ベグラーベン」
影がいなくなった。
男の人は、こっちに歩いて来てから顔をあげて、にっこり微笑んだ。
「大丈夫ですか? 怪我とかはないみたいですけど。……真紅色、綺麗ですね」
「?」
「その紐。私の大好きな色なんですよ」
男の人はふうの視線に合わせて座り、ずっと持っていたリボンを指差して微笑んだ。
「じゃあ、あ、あげる!」
「大切なもの、ではないのですか?」
「んぅ……。でもね、助けてくれたから、そのお礼!」
「そうですか。……ありがとうございます」
男の人はリボンを受け取ると、後ろの髪の毛をそれで結んだ。
「西園寺詩音、と言います。行くあてがないのであれば、一緒に来ませんか?」
「……ふぇ? 良いの? ふう、なにも出来ないよ?」
「大丈夫ですよ。私もまだまだ未熟ですから」
男の人——シオンが言ったことは、いまいちわからなかったのを覚えている。
あなたが未熟なわけがないのに——。