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Re: EUREKA ( No.84 )
日時: 2015/03/08 00:50
名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: nlCdadAl)


 蓮たちは詩音の操作する荷台に乗って、砂漠を移動中。
 詩音は前日に散々寝たため活き活きと操縦しているが、時々唸りながら空を見上げている。
 その間に風蘭はニベアとフェルームを起こして遊んでいた。ニベアが何かに気付いたように操縦席の方へ叫んだ。

『しょん!』
「……はい、なんでしょうか」
『あしょこにみじゅがあるよ!!』
「本当ですね……!? どう言うことでしょうかあれ」

 視線の先には、砂漠地帯にも拘らず池のようなものが存在していた。詩音がそちらに移動させると、とりあえず全員が荷車を降りた。

「何だこれ」
「……水魔法、だな。それにこれは……知ってる、気がする」
「真白? 大丈夫か?」
「……ぇあ」

 呆けたような返事をした直後、真白は地面を蹴り上げて走り出した。全員状況を把握できなかったが、詩音はとりあえず荷車で追うことを提案した。


 *


 初めて見た彼女は自分より幼い子どもだった。たいして長い年月生きたわけでもない自分からみても、触れれば壊れてしまうのではないかと思ったのは今でも覚えている。義母に抱かれているところを一度だけ見た。アイスグリーンの瞳は義母と同じものだった。
 自分はエーテル・魔力ともに制御が出来ず、触れた物全てに水分を含ませ、よく部屋を水浸しにしていた。父に制御を教えてもらっても成果は実らず、己そのものに翻弄される日々に恐怖心を抱いていた。
 壊れゆく城の中で、その色は酷く認識し辛かった。それほどに透き通った白だった。地面へ落ちる寸前でそれを受け止め、氷の破片から身を護るように翼を広げた。
 翼から伝わって来る激痛は少しずつ引いて行き、もう何も上から降って来ないことを確認してから少女を抱きかかえてその場を離れ、少女を地面におろしてから気付いた。
 ——水分が体内に——
 時々痙攣しているそれを見て、目の前が真っ暗になった。
 ——小さな命が。氷の姫が。
 ——腹違いだとしても……、自分の妹が——。

「おかぁ、さん……」

 そうぼやき、自分の服の裾を握る少女を見て、脳内では疑問がいくつも浮かんだ。
 彼女が自分の力を相殺しているのか、抑え込んでいるのか。瞬間的に制御出来ているなど思えない。実際隣に会った木の根に触れれば、たちまち湿った色へと変化していた。



「——君は、俺が……」

 薄らと開く眼はぼやけているが、視界を認識させてくる。視界にうつる砂と、感じられる熱気。
 今まで自分が見ていた場景は全て過去のものだと察した。しかし、現実と夢の境を彷徨う意識は思考をまともに働かせてはくれない。身体も同様に動いてはくれなかった。
 吹き荒れる砂塵は容赦なく襲いかかって来る。倒れて動けない自分は抵抗する術もなく、砂漠の猛威を浴びた。
 俺は状況を把握すべく、まどろむ記憶を掘り起こす——。