コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: EUREKA ( No.85 )
- 日時: 2015/03/09 12:49
- 名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: nlCdadAl)
情報を求めている時、街で聞いた情報。それは砂漠で魔物が出現した、魔王軍が侵攻しているということ。また、先日ゼウスへ立ち寄った際に聞いた“見世物屋に氷族がいた”。さらにその魔王軍の情報と氷族の情報が重なり、この砂漠に足を運んだ。飛んで移動するべきか迷ったが、砂塵を巻き込むと厄介なので、魔法でスケートボードをつくり、それで移動する。
途中で魔法を使い、水魔法と治癒魔法を合成させた泉をつくった。誰かの役に立てば良いが……。
魔力を探知するのは苦手だ。それこそ、氷族の彼女に至っては朝飯前の仕事だろう。——この作業は、集中力との戦いだ。
目を閉じて、周囲の風景を把握。次に、魔力を探知——その際にエーテルがあれば魔法を使っていることになる。そしてその魔力の属性を探知出来れば成功。ただ、途中で別のことを考えてしまったら失敗——風景図は歪みだす。
案の定今回も失敗に終わった。
思考に盛大な乱れが生じ、——運の悪いことに、自身の周囲の警戒も疎かになっていた。
丁度真下の砂の地面が真上に突き上げて来た。そのため反応が遅れ、崩れた体制を整えようとする。その一瞬を狙い、矢のような物が右腕を掠った。
現れたのは、トイフェルの群れと——緋色の瞳と、赤黒い髪を持った少年。少年がにやりと笑い、トイフェルに命令する。
刀を抜き、戦闘態勢に入る。トイフェルとは何度も戦ったことがある。相手が数を揃えようとも、負ける気はしなかった。
——戦闘が続けば、不覚を突かれていたことに気付く。
短時間で戦闘に終止符を打つことは出来た。だが、少年を逃してしまった。
「……たのむよ」
そう呟いてその場を去る少年を追いかけようにも、自身の身体は動かない。トイフェルによる攻撃は擦り傷程度だった。
「っ、う……」
最初の不意打ち——掠った矢は、即効性の毒を含んでいた。
そのせいで魔法もろくに使えず、地面に伏す。自身の能力を見誤った——失態だ。
歯を食いしばり、地面に手をついて立ち上がる。重たい身体を動かし、少年を追おうとする——思えばこの時、泉へ向かえば良かったのかもしれない——。意思とは反し、己の視界は暗闇に包まれていった——。
——そうか、俺は……。
少年——カインは周囲を確認する。毒のせいで意識が飛んでいたようだが、暗闇は今なおも迫り続ける。抵抗するも、毒の効果は続いているらしく、身体を動かすことはまだ出来ない。
かすかに開かれた視界は再び闇に包まれて行き、光のみが差し込んでいた。
その時、砂に伏していた身体が勢い良く宙を舞う。砂漠に住む蛇が、捕食せんと襲いかかって来たのだ。だが、朦朧とした意識はそれを認識できない。無防備な身体は重力に引かれ、剥き出しの巨大な口へと誘われる。
その時だった。
「——!」
蛇ではない、何かがカインに触れた。