コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: EUREKA ( No.9 )
日時: 2014/12/17 22:59
名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: nlCdadAl)


 森の中を歩いている間、真白は少々焦っていた。それを表に出さないように<焦り>をシャットダウンする。そうすることで、表情とともに感情を一時的に消去。
 1番付き合いの長い千破矢はそれに気付き、理解する。
 ——そして、その光景を死角から覗き込む男が1人。真っ白なパーカーを深くかぶり、その場を去る少年の存在に気付く者はいなかった。


 *


 建物が全て廃墟のような、色のない町——ロッカス。
 町の住民は虚ろな瞳をこちらへ向けて来る。

「早くここを出た方が良い」

 千破矢が蓮たちに提案し、寄り道禁止として町を駆け抜ける。
 ロッカスが見えなくなった頃、風蘭は問う。

「ねえ、どうしたの? ましろちゃんもちはやくんも、ピリピリした風が吹いてる……」

 その言葉に真白は首元を押さえ、千破矢は左肩を触りながら呟く。

「俺たちは、あの町で酷い目に遭ったんだ」

 千破矢の声はいつもと比べ細く、しかしはっきりと聞こえた。
 その場にいる全員が、これ以上彼らに聞いてはならないことを察した。
 真白は<焦り>の感情をスタートアップし、——同時に別の感情を開いた。

「よし! あの山の奥に僕と千破矢の友だちがいるんだ! 行って良いかな!」
「「「「「「「!?」」」」」」」

 唐突に振り返るやいなや表情こそ凍っているが、ハイテンションと言っても良いほどに元気の良い真白に全員が驚いた。
 だが同時に、暗い空気をぶち壊してくれた真白に感謝する。

「う、うん! じゃあ、迷惑かも知れないけど、真白たちの友だち? のところに行こうか!」

 蓮は若干焦りながらも対応する。それを見て日向は「頑張れ」と心の中で呟いた。詩音は状況が整理できていない風蘭に「大人(?)の事情ってやつです」と説明をする。鈴芽は友だちがどんな人物かを考え、豪雷はそんなことよりも真白のキャラについて行けずに脳内で右往左往していた。……らしい。

「あっそうか。あいつたしかこの辺だったもんな」
「……ああ。留守じゃなければ良いのだが」

 ——あ、戻った。
 日向と豪雷は同時に同じことを考え、ほっとする。

「あいつ、めっちゃくちゃ強くてよ。真白とよく手合わせしてたよなー」
「強いのか?」
「とてつもなく、な」
「では、俺も手合わせしてみたいのだが」
「向こうの許可が必要だけどな」

 千破矢もいつの間にかいつもの笑顔で豪雷と話しだす。
 それを見て詩音は、よくわからない感情がじわじわと溢れだしているのを感じた。