コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: EUREKA ( No.91 )
- 日時: 2015/03/13 19:38
- 名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: nlCdadAl)
- 参照: 今日は卒業式でした。ご卒業おめでとうございます!
「……すまない」
そう呟くと真白は糸が切れたようにその場に崩れ落ち、すぐ隣にいた詩音が素早くそれを受け止め、ゆっくりと床に寝かせた。
「お、俺……」
「落ち着いて下さい。そして、説明して下さい」
そう言った詩音の声はとても優しかった。真白たちの正面にある壁にもたれかかり、千破矢はそれに続いて隣に座った。その手には、透明な小さい玉が一粒握られている。
「あなたは、知っているのですか?」
「……?」
「いえ、それなら良いのです」
「この前、入れ替わった時あっただろ。マフラー外すなって言われたけど、こっそり見たんだよ、あれ」
「……」
「針みたいなので引っ掻かれたみたいな傷があってさ。その時は気にしなかったんだけど、あとから考えるとおかしいなって」
「何故?」
「あいつ、どのタイミングであんな怪我したんだ? っていうか、真白に限ってそんな怪我するもんか……?」
事情を聞いている詩音は厄介なことになったと思いながら苦笑する。千破矢は「それに」と続ける。
「……あいつ、ある日から口調が変わったんだ。最初の方でさ、硬い感じの話し方してただろ?」
「あー、今は大分……? 少し感情が読みやすくなりましたね」
「俺が初めて会った時、たしか9歳くらい。あの時なんて、風蘭レベルだったからな。一人称「僕」とか「我」とかじゃなくて「しろ」だったし」
「えっ」
想像して思わず笑いそうになってしまうが、それどころではない。千破矢の持っている小さい玉を指差す。
「氷族が狙われる理由、知ってますか?」
「……知らん。珍しいから?」
「それもありますね。ですが、他にもありますよ。その理由の1つがこれなのです」
「これ?」
「一見ビー玉みたいな物ですが、一粒売れば一生遊んで暮らせますよ」
「エッ!?」
思わず手を離し、玉が床に転がって行く。千破矢はその手を見つめ、「マジかよ」と呟く。
「じゃあ、あいつらが……」
「……なんたら施設みたいなところの話ですか?」
「ケーフィ……ヘル? なんだっけ。KHでの話」
「そうですか」
これ以上は何も聞かなかった。
詩音は立ち上がり、もとの場所へ戻って真白の持っていた本を開く。一度だけ千破矢の方を見ると、足の間に顔を埋めて震えていた。数秒後、真白が千破矢を吹っ飛ばすことを2人はまだ知らない。