コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: EUREKA ( No.95 )
- 日時: 2015/03/16 18:45
- 名前: 水無月 紅雪 ◆zW64EWZ0Wo (ID: nlCdadAl)
「はい、これでどうでしょう」
「……うん、ありがとう。やっぱり僕より鈴芽の方が」
「いえ、丁度動きやすいので問題ないです。ありがとうございます」
心なしか少しだけ機嫌が良い詩音を見ながら、羞恥心に襲われる。——目の前の詩音は、誰がどう見ても完全に少女のそれだった。声ももともとから高い方なため、違和感がない。
今豪雷に見せたら精神的なダメージははかり知れないだろう。
「「「「「わああああああああああああああ!?!?」」」」」
「……死のう」
「やめろっ?!」
荷車に入ると叫び声と、その中から1つだけ物騒な呟き。鈴芽はもはや奇声に近い声を上げながら詩音に近付いた。
「ねえねえねえ、これcoordinateしたのってましろん!?」
「はい」
「うっそぉ! berrycute!!! 可愛いよシオン!」
「……死のう」
鈴芽の声は操縦席まで丸聞こえだった。そこでも1人、物騒な発言をする少女がいたという。
*
予想外だった。
荷車から降りた瞬間、盗まれた。……馬ごと荷車が。
「うわああくそったれえええええええええええええええええええええええ!!!」
「ましろん、ここって金持ちの街じゃなかったの?」
「完全に嫌がらせですね」
「詩音よりタチ悪い」
「ちょっと!?」
「それに……。ロボ二体まだあの中いるんだけど」
「「「えっ」」」
「それに——」
「——消えろ!!!」
「「「えぇっ」」」
割り込むように突っ込んできた影に吹き飛ばされる。辺りが煙に包まれるなか、真っ黒な瞳だけが見えた。——ちなみに真白は迷うことなくその影に向かって刀で斬りかかっていたが、逃げられてしまった。
煙が消えるころ、騒ぎを聞き付け人が集まって来ていた。
「何事だ?」
「見たこともないやつらだな……。うおい、めっちゃ珍しいやついるぞ」
詩音は「うわあ」と面倒臭そうに呟き、懐をごそごそと弄りだす。そしてそれを前に突き出して——
「……」
「ひぃっ」
「な、で、でも……」
「なんでしょう?」
「ごめんなさいぃっ!」
名刺のような物を見せた瞬間、人は全員ひれ伏し始める。やれやれと首を振りながら詩音はスタスタと歩いて行く。それを追ってその場を去る。
「何見せたんだ?」
「お父様の名刺です」
「わあ」
——そりゃあビビるわ。そう思った一同だが、口に出すことはなかった。