コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 脇役にもなれない君たちへ ( No.9 )
日時: 2014/12/24 02:07
名前: みもり (ID: DYDcOtQz)
参照: 今日から三好くん編です。めりーくりすます。

 昔から何かにハマるとそれしか見えなくなる人間だということはわかっていた。僕の手に握られた端末は暗闇でちかちか点滅し、「ゲームクリア」と見慣れた文字を映し出す。

 パズル&モンスターズ、全ダウンロード数3000万越え。ドロップを回して、可愛い女の子型モンスターを攻撃させるというシンプルで面白い今大人気のスマホアプリである。半年前に買ったスマホに、なんとなくダウンロードしたそのアプリに僕はすっかり浸かってしまい、今だって寝る間も惜しんで元気にダンジョン周回中。右手に参考書、左手でドロップを回す僕は傍から見れば完璧に変な人だろうが、どうせこの家には誰もいないので僕的にもオールオッケーである。
 明日で定期試験も終わる。そしたら、もっといっぱいゲームができる。たしかもうすぐ冬休みだったから、一日中ゲームができる。なんて素敵なことだろうか。時刻は午前5時、今から寝ても頭痛を助長させるだけだ。僕は2日連続のオールナイトを決め、エナジードリンクでも飲んでおかなければと思い、立ち上がった。

 自室の冷蔵庫を開けても、そこには昨日買った焼きプリンしかない。僕はそのへんにあった中学の頃の指定ジャージに着替えて、最寄りのコンビニへ向かうべく玄関へ向かった。

 「……うわ、さっむ」

 コートも着てこなかった自分に舌打ちしたくなる。
 午前5時の冬の朝は僕には寒すぎる。もうこれ、雪でも降るんじゃないか。雪なんか降ったところで僕にはなんの関係もないので勝手にして欲しい。通学路を僕と同じジャージを着た中学生が走っている。すれ違いざまに「おう、お疲れ!」と、早朝から暑苦しい笑顔で挨拶された。もしかしてだけど僕は歳下に見られたのだろうか。もうこのジャージを着て出歩くのはやめよう。

 ポケットの中の財布を確認すると、そこには野口英世3体と、平等院鳳凰堂がたくさんと、銀色の硬貨がいくつかか入っているだけだった。これだけで12月を生き抜かなければいけない。あとはクラスの館山にパシらされる分を考慮して、ううん、あと20日もある12月の食費を3500円で生き抜くなんてやっぱり厳しい。それでも今はイベントがあって、どうしてもお金をゲームに注がなきゃいけないのに……

 最寄りのローソンは某大人気スクールアイドルアニメとコラボ中。そのアニメにもアプリゲームはあるらしいが、ガチャもエグそうだし確率も酷そうなのでやっていない。そもそも音ゲーなんて、僕には向いていないのだ。音楽に溺れたことも昔はあった。でも、結局僕は一番にはなれなくて、挫折したんだっけ。

 モンスターエナジーを1缶持って、誰もいないレジに向かおうとして歩いていると、ゲームで使える仮想通貨と引換ができる魔法のカードにエンカウントする。月初めなんかは10000円分を大人買いしたりもするのだが、今の所持金は3500円。これで今月はやりくりしなければいけないのに、それなのに。
 どうしても僕は、このカード相手には理性を保てないようだ。

 野口英世、出撃。さよなら僕の3000円よ。


   episodeB 「公開処刑的RMT」


 「晴賀、お料理作ってあげられなくてごめんね。お母さん頑張って仕事するから、これで美味しいもの食べてね」

 申し訳なさそうな表情の母は、決まって月初めに、僕に50000円を渡す。母に心配はかけたくないから、「僕アルバイトもしてるし、大丈夫だよ」と笑う。その僕が、渡された50000円を、ほとんどゲームに使っていると知ったら母はどんな顔をするだろう。しかもそのゲームは、何の形も残らない電子データだ。

 「お会計、3205円でーす」