コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 未来視少女 ( No.2 )
日時: 2014/12/21 10:25
名前: フォルテ (ID: nWEjYf1F)

「——じゃあ、一着くらいなら買ってあげる」
「やったぁ!」

 少なくとも4人前はあっただろうオムライスを、ママと2人でペロリと平らげた後のこと。
 欲しかったワンピースが買ってもらえることになって喜んでいたら、丁度ほんの少し先の未来が視えた。

 ——大型トラックが、家に突っ込んでくる。

「!」

 それから私は、一瞬だけ硬直した。
 トラックが突っ込んできた後に一瞬視界が暗転したということは、つまり未来の私に死が待っていることになる。
 きっとそれは、ママも同じ目に遭うと思う。

「ママ、こっちきて」
「え? 何よいきなり」
「いいから」

 私はママの綺麗な手を掴むと、なるべく急いでその場を離れた。
 とりあえず先ほど視えた映像からして、被害はこのリビング程度では収まらないと看破した。
 おまけに台所では晩御飯の煮物が煮詰められている最中であり、下手したら火事になりかねない。

 じゃあ何処へ逃げるべきか。
 でも私は考えるより早く、家の裏口まで来ていた。

「……?」

 訳がわからない、といった風に黙り込んでいるママを右手で庇うようにして、私は遠くに見えるリビングを見据える。

 視える未来はいつだって、たったほんの少し先。
 それはもしかしたら1時間後かもしれないけど、1分後っていう可能性だって否定できない。
 でも今回は、1分よりも早かったみたい。

「きゃあ!?」
「っ!」

 ——刹那。家中が、まるで地震でも起きたかのように振動した。
 その強烈な振動と共に響いてきた轟音が私たちの耳を劈いたけど、もう何が破壊されたのかさえ、全く区別がつかない。
 一方で悲鳴をあげたママは私をきつく抱き寄せ、私共々少なからず、恐怖と驚愕で身体を震わせた。
 だけどそれらは、全て一瞬の出来事だった。

「な、何……」

 だからかな。その一瞬が収まっても尚、ママが目に見えて混乱しているのは。
 でも仕方ないと思う。私は予め知っていたから落ち着いていられるけど、ママには全然分かったものじゃないから。

「ちょっと、由美!」

 これ以上、被害を拡大させるわけにはいかない。
 私はママの腕を振り払うと、丁度すぐそこにあった消火器を手に取り、台所目掛けて走った。