コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: COSMOS ( No.1 )
日時: 2014/12/23 02:05
名前: Garnet (ID: bp91r55N)

——奈苗。
  お母さんね、あなたが産まれたとき、嬉しくて泣いたのよ…
  理由?
  うーん…
  なんでかな??
  でも、私に似て 癖っ毛だったのは、嬉しかった。
  ごめん、初っ端からダメなお母さんで。


だ、れ…


——じゃあ まず、説明しなくっちゃ。
  なんで、こうして声を吹きこんでいるのか。
  そうね…
  あなたがこれを初めて聴いているのなら、まだ難しいかもしれない。


ムズカシイ…?


——実は、お母さん…
  遠いとおい所に行くことになったの。


遠い、ところ?


——そこには あなたが来ることは出来なくて、
  私も、あなたのいる所には 戻ることができない…
  あ。
  あと、この事も言っておかないと。
  …お父さんも、お母さんと同じところにいる…って。
  ちょっと難しかった?
  ごめんね。
  でも これも、
  奈苗…あなたの為なのよ。


アナタノタメ…


——まだまだ話したいことはたくさんあるんだけど、もう時間ね。
  あなたの次の誕生日、
  また テープを送ります…。



ガチャッと大きな音がして、『お母さん』の声は聞こえなくなった。
代わりに 柔らかな陽の光が分かるようになった。
まだ 目は開けられない。
何かを求めて、口を大きく開けると、たくさんの空気の味がする。

「あ、欠伸した!」

可愛らしい高い声。
誰だろう?
手を伸ばして探ろうとしたんだけど、
なぜか眠くなって 何もすることができなかった。

早く会いたいな…

Re: COSMOS ( No.2 )
日時: 2015/01/06 14:41
名前: Garnet (ID: .VvRUm0J)

あのあと、
何回 泣いて、笑って、眠っただろう。

「奈苗ちゃーん、知美と遊んで!!」

あの 可愛い声が聞こえてくる。
『ともみ』って言うの?

「こらっ、大きい声出さないの。」

あ、
新しい声だ。
ちょっと『お母さん』に似てる。
でも違う。

「は〜い、奈苗ちゃん。口開けて〜」

え?何?
気がつくと、目がぱっちりと開いていた。
ぼやけてよく見えない…

「あらー!奈苗ちゃん、起きたのね!」
「わぁ、ほんとだ!」
「奈苗〜!おはよーう!!」

ドヤドヤと色んな声が押し寄せて来る。
あーもうっ!
うるさいっ!!
叫びそうになりながらも、目の前に差し出された何かに吸いついた。
甘味が口の中に広がる。

「まあ、可愛らしいこと。」
「赤ちゃんがここに来るのは、久し振りだものね。」

ふうん、赤ちゃん…
ん?
赤ちゃん?!!
びっくりしてむせ返った。
え?
どういうことなの?!
あの子は??
あの人はっ??

「あーっ!ちょっと!!誰かぁ!!」

身体をよじらせて暴れる私を、『お母さんみたいな声』の人が抑えつけた。
やめて…!
離して…!

わたしは、あの人のところに…帰るの—————!!!

Re: COSMOS ( No.3 )
日時: 2014/12/23 20:41
名前: Garnet (ID: cdCu00PP)

———……ちゃん、
   願い事が一つだけ叶うとしたら、どうする?


蝋燭の灯がゆらゆらと燈る闇の中、『あの子』が切り出した。


———うーん。戦争が終わってほしい、かな。………は?

———同じ。

———だよね。私、こんな暮らしが終わったら、
   ………と一緒に、すき焼き食べたい!

———すき焼き、かぁ。


切なそうな声に顔をあげると、
防空ずきんを被ったままの『あの子』が涙を落とした。


———大丈夫?

———フッ…
   僕、裏切り者だから——

———え?