コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: COSMOS ( No.104 )
日時: 2015/03/01 17:49
名前: Garnet (ID: Yry.8Fde)

———万歳、万歳…天皇陛下……万歳…っ…


お母さん、泣かないで。


———何が そんなに御めでたいの。
   「御国の為」に、命を落とすことが、そんなに嬉しいこと?


お…ねえ…ちゃん…
そんなこと、言っちゃダメなのに。

バシン。

痛い音がする。


———っ!!…何でこんなことになっちゃったのよ…
   お腹いっぱいにご飯を食べて、安心して眠って、沢山勉強して、沢山遊んで…
   やりたいこと、いっぱい…数えきれないほど、あるんだよ??


やめて…

もう、泣かないでよ…


———俺は男だ!!
   御国の為に戦う…これほど…これほど、有難いことは無いじゃないか!!!


お父さん…

本当に、そう思えたの?


———ほら、お前も 喜べ。
   俺を、父親を 誇りに思え。


わたし…?


———そうだ。
   お前らは、大事な子供なんだ。


うん、そうだね…

わたし、お父さんとお母さんの子供で、よかったよ。

万歳、
バンザイ。
ばんざい…



あの日に食べた水団は、すごく美味しかったんだよ…

具なんてなくても、美味しかった。

あんなに 愛で溢れていて、しょっぱかった水団、初めてだった。



あの人生、無駄なんかじゃなかった。

Re: COSMOS ( No.105 )
日時: 2015/03/01 18:02
名前: Garnet (ID: Yry.8Fde)

幼稚園での 初めての給食で、水団が出たんだ。
一口食べた瞬間、あの日のこと…お父さんが赤紙を貰った日のことを思い出して。
ちょっとだけ、泣いた。

「奈苗ちゃん、どうしたの?」
「大丈夫?」
「不味いんなら、オレが食う!!」

皆に 心配かけちゃった。


不思議なことに、誰も言わなかったんだ。

髪の色のことも、
目の色のことも。

Re: COSMOS ( No.106 )
日時: 2015/03/02 10:44
名前: Garnet (ID: cEkdi/08)

遡ること、2週間ほど前…


紺の 可愛いセーラーの襟。
髪色に合わない 紺地に黒いリボンの帽子。
園指定の鞄。

「いいなーっ、奈苗ちゃんばっかり〜。陽菜も四つ葉がよかった〜」

陽菜ちゃんは、制服の試し着をした私を見るなり、だだをこねだした。
『四つ葉』っていうのは、例の幼稚園の名前。

「陽菜ちゃんの幼稚園だって、園服があるじゃない。」
「うーっ。」
「ピンクなんだよ!知美ちゃんも着てたでしょ?」
「ぴ、ピンク?!」

鈴木さんの言葉で、何とか機嫌を直してくれた。

「確か…、四つ葉は2週間後の月曜日ね。」

カレンダーを眺めながら、鈴木さんが言った。

「陽菜ちゃんは?」
「その次の週よ。」
「お弁当、大変だね。」
「あはは…」

ピンク、ピンク!と パズルマットの上を跳ね踊る陽菜ちゃんをよそに、
私達は これから訪れる波乱万丈の日々に、少々不安を抱きつつあった。
今日届けられるであろう、母からのプレゼントに期待をして…


そして、
この制服を スケッチブックに描こうとした、その時。
少し乱暴に 部屋のドアが開いた。

この開け方は、間違いなく 黒江さんだ。

「届けものよ。貴方のお姉様から。」
「「…」」

彼女の 空気を読まぬ発言に、3人は無言になった。
すると、そんな彼女の後ろから 伏し目がちな女性———清水さんが、音もなく現れた。

Re: COSMOS ( No.107 )
日時: 2015/03/02 14:42
名前: Garnet (ID: cEkdi/08)

清水さんは、鈴木さんに素早く近づくと 何か耳打ちをした。
だが、嫌でも口の動きが解ってしまう。



FBIと…—————から…

手紙が…

添えられていました…

—————の期限は…

2週間後です…



多分、そんなふうに言っていた。