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ガチャン。
埃を掃ったラジカセに、カセットテープをセットした。

お母さん。
今日は どんな話を聞かせてくれるの？


——奈苗、４歳のお誕生日 おめでとう。
　　今年からは幼稚園生だね。
　　奈苗の姿、見たかったなあ…。


懐かしくて、優しくて。
私も お母さんに会いたい。


——友だち、きっと すぐにできちゃうわよ。
　　お母さんもね、久し振りに日本に帰ってきたばかりの時、随分苦労したの。
　　前に住んでたのと同じところでも…空気が全然違うのよね。


空気？


——そう、イギリスとアメリカと日本を 行ったり来たりする度、全然違うの。
　　知り合いが 何処かへ引っ越してしまったり、
　　年を取ってしまったり。
　　よく親切にしてくれたお婆さんが、次に帰ってきたときには もう亡くなってたっていう事もあったわ。
　　お母さんのお母さん…そうね、奈苗のおばあちゃん。
　　おばあちゃんも、それでショックになっちゃって。
　　デュヴェイにくるまって、『死にたくない』って何度も言ってた。


へえ…


——今となっては これも、良い思い出ってやつかな。
　　だって…おばあちゃんったら、奈苗と入れかわりに 天国へ行ってしまったんだもの。
　　生まれ変わりなのかなって、ちょっぴり笑っちゃって。
　　ふふ…ごめんね、何か 変な話になっちゃった。


いいじゃん。
笑えるって、元気ってことでしょ？


——そうそう、最後にもう一つだけ。
　　難しかったらごめんね。
　　…お母さんの生まれ故郷は 日本よ。
　　それで、おばあちゃんも日本生まれ。
　　…んー…、おばあちゃんのお母さんは、日本人だったらしいけど…
　　おばあちゃんのお父さんは、アメリカ人だったらしいわ。


ん？？


——つまり…
　　おばあちゃんはハーフで、お母さんは クォーターの日本人。
　　お父さんは アイルランド人だから…
　　奈苗には、８分の１しか 日本人の血が流れてないのよ。


…。
何か、凄い真実を聞かされてしまった。


——うまくまとめられなかったけど、
　　ほとんどの確率で 目の色も髪の色も変わらない、ってことよ。
　　もし このことで悩ませてしまったら、ごめんなさい。
　　でも、お母さんもお父さんも、奈苗のことは大好きだから。


ありがとう…
でも大丈夫。


——恵理の言うこと、ちゃんと聞いてね。
　　彼女、あれでも立派な 私の妹なんだから。
　　じゃあ、また来年。
　　バイバイ…


そして、テープが終わった。

デュヴェイ……イギリス英語で、『掛け布団』のこと。