コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: COSMOS ( No.118 )
日時: 2015/03/08 17:56
名前: Garnet (ID: WfwM2DpQ)

「「えぇ〜っ?!エマの家にっ?!」」

麻衣と翔とトモが、目を真ん丸にして 叫ぶように言った。

「シーッ!!あんまり大きい声で言えないんだよ…」

近くを誰かがうろつく気配がしたので、そーっと 下を覗いた。
何だ、先生か…
因みに、此処は 学校の屋上に続く階段の、最上部の踊場。
屋上にさえ出なければ、ここに来るのに 特に許可はいらない。

「え?なんで?」
「だから マイ…大きい声出さないで…」
「あぁ、ごめん。」

麻衣は謝ると、声を潜めた。

「だって、皆が狙ってるんでしょ?エマん家。」

トモは理解が早いので助かる。

Re: COSMOS ( No.119 )
日時: 2015/03/08 18:25
名前: Garnet (ID: WfwM2DpQ)

それもそうだけど………
すると、

「どっかに引っ越すのか?」

と 翔が言った。

「今のアパートは仮住まいだから…、そういう事だよ。
 夏休みぐらいには、ちゃんとしたマンションに引っ越すつもり。」

へえ、と 彼らはまた、目を丸くした。

「じゃあ、もう3時だし 行こうぜ!」
「「おー!!」」

翔の合図で、麻衣とトモもランドセルを背負った。

まぁ…本当に 私達の根城に招き入れたいのは、この子達じゃないけどね…
ふっ と思わず笑みが漏れて、それに気がついたトモが ギョッとした。

3人が走って行ったのを確認して、私は 彼女に耳打ちした。

「ねえ。奈苗ちゃんも一緒に来てもいいけど、どう?」
「う、うん…聞いてみる…」

トモは 顔を強張らせて頷いた。
私がせっかちなのが悪いんだよね。

ごめんね。魔女の使者さん—————

Re: COSMOS ( No.120 )
日時: 2015/03/09 20:26
名前: Garnet (ID: 8DRwer.2)

掛け時計の音だけが、何とかこの空気を支えている。
トモが遠慮がちに 紅茶を啜った。

「あ…えと…、奈苗ちゃんとエマって、仲悪いんだ??」

麻衣が 私に耳打ちする。

「そ、そうみたいだね…」

もう 笑うしかないでしょう。
私達以外 この場にはいないって 嘘、見破られたみたいだから…

当の彼女は、目だけを動かして 辺りの様子を伺っている。
ニット帽も被ったまま。

「奈苗ちゃぁん、お菓子でも食べたら?」
「いらない」

即答。

「帽子脱いだら?」
「いいの」

またも即答。

ああ…立場が…
やっぱり 私この子に勝てる自信無いよ、お父さん…
バスルームの方向に目をやった。


———何年掛かったっていいから、あの子を……
   ルビーの娘を、味方に付けてくれよ…頼む…


そうだ……
何年掛かったって、いいんだ。
焦るな。
信頼を得るなら、じっくり…。

そして、今一番守らなければいけないのは…
お父さんなんだ。


———貴方は、私たちのすべてなの…
   美しくて 強い人間になってほしいから…
   その生命いのち、大切にしてね…


Emma…
その名の語源は、
Ermen.
「すべての」「美しい」「強い」…
ドイツ系の名前の、言葉。

今だから、意味が分かるんだ…


「奈苗ちゃん…
 実は 私ね、お父さん以外…身寄りがいないの…」


まずは、この子の生命を大切にすることから始めよう。

Re: COSMOS<エマ編終わるまでロックですm(_ _)m> ( No.121 )
日時: 2015/03/17 14:15
名前: Garnet (ID: 0exqyz.j)

夕暮れの中、
トモと奈苗ちゃんと私は 2人の住んでいる施設に向かって歩いていた。

「エマ、あんなに大事な話をしてくれてありがとう。」

奈苗ちゃんが ペコリとお辞儀した。
彼女の髪も、さらりと流れる。

「私、誤解してたんだ…
 前に、罠にかけられそうになった事があって…。」
「いいの!解ってくれれば。」

あまりにも 奈苗ちゃんが申し訳なさそうに言う
ものだから、
逆にかわいそうになってしまった。

それに、話した真実とその相手は、ほんの一部に過ぎない。
奈苗ちゃんの過去も、トモに比べれば 100のうち5くらいしか分からない。
ただ…

「…ねぇ、2人とも…。
 もし良かったら、また 遊びに来て。
 私達でティーパーティーでもしようよ。」

この子達なら、
本当の意味での友達に、なれるかもしれない。

「いいよ!…でも、麻衣ちゃんとかは?」

トモが尋ねた。
でも 私は、

「2人だけの招待だから!!」

と 答えてしまったのだ。
私達を待ち受けている『嵐』にも気付かずに…。