コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: COSMOS【レス数調整中φ(..)】 ( No.176 )
- 日時: 2015/04/26 01:59
- 名前: Garnet (ID: IkQo2inh)
———いってらっしゃい。
———いってきます…。
薄暗い玄関。
俯く私に 困ったように笑った母。
あれが、母を見た最後だった。
———疎開したら、お父さんに お手紙書くんだよね?
———そうよ。
さっ…、早く行きなさい。
そのやり取りが終わると、私は 荷物をカタカタいわせて走り出した。
その後、何日か経てば 疎開先に着いていたはず…だったんだけど。
『あの子』に出会ってしまったのは、宿命だったようで。
———いたたた…っ
防空頭巾を被ったまま、背中をさすった あの声は、鮮烈に 記憶に焼き付いた。
- Re: COSMOS【レス数調整中φ(..)】 ( No.177 )
- 日時: 2015/04/26 18:24
- 名前: Garnet (ID: u6EedID4)
騒がしい子供たちが どんどん前の方に遠ざかり、私は、畦道を独り、立ち竦んだ。
男の子が唄う軍歌が、虚しく響いている。
———戦争なんて、無くなっちゃえばいいのに…
1941年、まだ、おしまいはやって来ない。
こんなのって、馬鹿馬鹿しい。
でも 大人には逆らえないから、言うことを聞くしかないんだ。
そう思って、皆のところへ走り出そうとした途端!
———いだっ!!!
頭と腕に鈍い痛みを感じ、よろけると、緑の匂いの中を転げ落ちた。
———なっ、何?!
———いたたた…っ
誰かの声に 慌てて起き上がろうとすると、何かに視界を塞がれた。
———え……?
———ごめん、少し、目を閉じて。
透き通った声と、瞼に当たる前髪が、なんだかこそばゆい。
———ごめんね、大丈夫だった?
そう聞こえたと同時に、視界が開けた。
淡い 田んぼの風景画の中に、眩しい程の白い腕と脚が映えている。
思わず目を奪われた。
でも、顔は、防空頭巾に隠れて見られなかった。
———だい、じょうぶ。
———良かった…。
彼の口から、安堵の溜め息が零れる。
とは言っても、一番心配なのは 彼のほうなわけで。
———貴方こそ、大丈夫なの?!こんなに服が汚れて……
———僕は平気だよ。
彼はそう言うと、私の手を取り、立ち上がった。