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Re: COSMOS【レス数調整中φ(..)】 ( No.184 )
日時: 2015/05/06 14:28
名前: Garnet (ID: bGiPag13)

———ところで…貴方はどうして、こんなところを凄い速さで走っていたの?


眩しい日差しの中、私達は どちらともなく歩き出した。
何処に行くわけでもない。


———あぁ、その説明がまだだったね。
   でも、その代わり…君は あの集団のもとに帰れなくなる…
   それでもいいのなら——

———嫌だ!!疎開なんてするもんか!


とんでもないことを口走ってしまって、ハッとする私。


思わず顔を上げてしまいそうになって、慌てる僕。


彼が拳を握ったのを見て、身体がビクリと動いた。


———ご、ごめんなさい…っ。お願い、怒らないで…


ここが家なら、お父さんがいるなら、これは嫌な合図。
勿論、私が悪いのは ちゃんと分かってる。そういう世界だから。
とはいっても、その恐怖心は 私の視界を揺らしていく。

そして、彼が一歩踏み出し、涙が零れた、その時。


———怒ったりなんて、しないよ


優しい声と温もりに、すっぽりと包まれた。


———この空間は、誰にも邪魔されない。誰にも怒られない。何も強制されない。
   …僕だって逃げ出したんだ……この国が、嫌になった。
   どうせなら、2人で 何処か遠くへ行ってしまおうよ。


言葉が終わると同時に、温もりが そっと離れた。
高い鼻と長い睫毛が ちらりと覗く。


———うん…でも…東京からは離れたくない…

———そっか。じゃあ、名案がある。一緒に行こう?


彼の言葉に、私は 力強く頷いた。
けれど、大事なことを言い忘れていたのに気がついて。


———ねぇ。


服の裾を、ちょこんと引っ張った。


———ん?

———名前、何ていうの?

———言い忘れてたね。僕は、ノア。

———のあ…?


変な名前、と言おうとしたら、君は?と訊かれた。


———私は…桜子。


何処かで 鳥たちがさえずった。


———桜子ちゃん、か。………良い名前だね。